極限状況に備え知っておきたい 惨事ストレス対策の予備知識

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   誰もが自然災害や事件・事故に巻き込まれないともかぎらない時代です。不幸にしてそんな出来事に見舞われたら、心のケアはどのようにすればいいのでしょうか。

   大きな地震やテロなどに遭遇すると、目に見えない障害であるPTSDのリスクも高まります。PTSDとはPosttraumatic Stress Disorderのことで、日本語では、心的外傷後ストレス障害といいます。疾病分類的には不安障害の下位概念に位置づけられます。

繰り返し不安に襲われる

心の安定を取り戻すには
心の安定を取り戻すには

   PTSDは、生死にかかわるような、恐怖や苦痛をともなう出来事(自然災害や事故、犯罪など)に遭遇し、しばらく後に、その恐怖が繰り返し起こり不安になってくる「再体験」に襲われる障害のことです。例えば、5年前の東日本大震災では、多くの人々が、災害が去った後も、津波に襲われるような恐怖を繰り返し体験しました。

   再体験のほか、そのことを考えるのも思い出すのもいやだ、と恐怖の原因となった出来事や場所を「回避」する行動を取ったり、精神状態が不安定で集中力を欠き興奮しやすくなる「過覚醒」の症状が出たりします。

   多くの人が恐怖を経験した組織内では、個々のイライラから衝突が発生したりするなど人間関係にきしみが生じ、組織の士気や満足度が低下することになります。つまり、PTSDを含めた惨事ストレスは、人の心だけでなく会社組織などにも大きな変化をもたらすことになるのです。

   恐怖や苦痛を最小限にして自分を守ろうとする「解離」という状態にあって今までキビキビ仕事をしていた人が、急に「仕事に集中できない」などの状態になることもあります。

   しかし、惨事ストレスを理解するうえで重要なことは、再体験、回避、過覚醒、解離といった症状がそれぞれ「異常な状況における正常な反応」だということです。

   それらは多くの場合、一過性で、自然と消滅していきます。しかし、中には、重いPTSDになる場合があります。

あらかじめ知っておきたい対応策

   大きな災害が起きますと、救援隊のほかに「心のケア」の専門家が派遣されます。なるべく早いケアが基本です。

   さらに理想を言えば、強いストレス局面に遭遇した際のメンタル面の知識をあらかじめ身に付けておくと、PTSD緩和に効果があると推察されています。私は、あらかじめ惨事ストレス予防のための心理教育を施しておくことを「ストレスワクチン教育」と呼んでいます。

   惨事ストレス緩和のために知っておきたい対応策は、以下の3つのステップに分かれます。

   ステップ1「自分自身でPTSDに気づく」。以下の項目をセルフチェックしてみよう。

   (1)つらい出来事が再体験される。悪夢を見る。繰り返し思い出される

   (2)イライラする。人に八つ当たりする。怒鳴る。不眠が続く

   (3)嫌な体験に触れない。思い出したくない

   (4)いつまでもそのことを考え、心の切り替えができない

   (5)先々のことが心配でいつも考えてしまう

   (6)体調が思わしくない状態(眠れない、疲れやすい、頭が重い、めまいがする、食欲がないなど)が続いている

   (7)自分を責めている。ダメな自分だと思う

   ステップ2「PTSDへの対処法を自ら試みる」。以下の対処法(コーピング)をやってみよう。

   (1)7時間睡眠をとる

   (2)食事をしっかり摂取する。とくにタンパク質、野菜、くだものなどを

   (3)リラクゼーション(過覚醒への対処)で腹式呼吸などをする

   (4)生活習慣の改善、とくにお酒の飲みすぎに注意する

   (5)一人で頑張りすぎてバーンアウトしないようにする

   ステップ3「専門家に相談する」。何よりも大切なことは、体調不良が続くようならば、専門家を訪ね、しっかりと診断を受けることです。

   ご参考までに総合心理教育研究所の「惨事ストレス対策ビデオ」と「リーダーが必ず身につけたいメンタルヘルスの基礎知識」を紹介しておきます。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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