2024年 4月 24日 (水)

われわれは前例に流されがち 求められるのは常識を疑う力(ライフネット生命・出口治明)

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   僕は会社員時代、ずっと社宅住まいでした。ライフネット生命を起業するので「辞めます」と会社に告げたら、「君、家はどうするのや」と言われ、あわててアパートを探しました。

   なにしろ社宅は会社に近く、仕事のあと飲んで帰るには好都合。「持ち家と賃貸とどちらが得か」という議論はあるでしょうが、僕は社宅で十分満足していました。

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「神話」が今なお生きている

   マイカーは、ロンドン勤務のときまでは使っていましたが、東京に帰ってきたときに手放しました。東京は車庫代が月3~4万円と高く、地下鉄やタクシーを利用するほうが安い。車を持たなくても不便を感じることがありません。

   新規に住宅を購入して35年ローンを組む、そんな国はめったにありません。日本人全体がそれを当たり前とする価値観、一つの常識に囚われすぎているのではないでしょうか。別の言い方をすれば、高度成長時代の「乗数効果」の神話が今なお生きているように思います。政府が住宅に投資をすれば、国民所得が上がり、消費が増えるという波及的な好循環が起こるという考え方に、いまだに固執しているようです。外国の友人は、空き家が800万戸もあるのだから、優遇税制は中古住宅の取得に限定・集中したら、と言っていますがその通りだと思います。

   住宅ローンは本当に必要なのか、一回ローンを組むと転職が難しくなるのではないか、公営住宅でも民間の賃貸住宅でもいいのではないか、そのように常識を一度疑ってみることも大事だと思います。

   概してわれわれは、社会の常識を疑う力に乏しいようです。物事の本質をよくよく考えてみようともせず、前例主義に流されがち。そこが問題です。

   たとえば、女性が働きやすい社会をつくるという課題についても、常識に囚われず、もっと自由に議論を交わすべきだと思うのです。ちなみに僕は、「男女に差はない。むしろ男性は筋力で上回るぐらいで、あとはたいてい女性のほうが優秀」という考え方をしています。当然、優秀な人には働いてもらって、自分の力を発揮してもらったほうが社会全体のためになる、という立場です。

出口治明
出口 治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社創業者。1948年三重県生まれ。京都大学卒業後、1972年に日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを歴任。2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業。著書に『生命保険とのつき合い方』(岩波新書)、『働く君に伝えたい「お金」の教養--人生を変える5つの特別講義』など。
2018年1月から、立命館アジア太平洋大学学長、学校法人立命館副総長。
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