2024年 4月 19日 (金)

テレビがなくても受信料を支払う日がくる?「TV離れが加速する」 NHKの強引な届け出義務化に新聞や民放各局が猛反対!

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   米大統領選「バイデン氏勝利宣言」のニュースの洪水に隠れて、新聞各紙とも地味な扱いだったが、2020年11月9日、「みなさまのNHK」らしからぬ振る舞いがマスコミから批判を浴びていた。

   受信料を効率よく徴収するためにNHKが総務省に要望していた、テレビを持つ全世帯のNHKへの届け出の義務化の動きが、新聞界や民放各局の猛反対にあい、雲行きが怪しくなったのだ。いったいどういうことか。主要メディアの報道とネットの声を拾うと――。

  • テレビのない人も届け出義務化?(写真は、NHK渋谷放送局)
    テレビのない人も届け出義務化?(写真は、NHK渋谷放送局)
  • テレビのない人も届け出義務化?(写真は、NHK渋谷放送局)

テレビのない人の届け出義務化まで目論むってアリ?

   そもそもNHKが要望している「テレビ設置の届け出義務化」とは何か――。主要メディアの報道を総合すると、ことの発端は今年(2020年)10月16日に開かれた公共放送のあり方などについて検討する総務省の有識者会議分科会だった。

   NHKは、家庭や職場にテレビを設置した際に、NHKへの届け出を義務化する放送法改正を要望した。放送法は64条で、NHKの放送を受信できるテレビなどを設置した人に対して「放送の受信についての契約をしなければならない」と定めている。しかし、NHKによると、全国の世帯の約2割は受信契約を結んでいない。未契約者に対して訪問や文書で契約を促しているが、テレビ設置の有無を確認できないケースが多く、訪問をめぐるトラブルも頻発している。また、人海戦術に頼るため、多大な人件費がかかっている。

   このためNHKは、

(1)放送法を改正し、テレビ設置世帯に対するNHKへの設置届けの義務化を求めた。
ただし、届け出をしなくても罰則は求めないという。
(2)(1)と同時に、受信契約を結んでいない世帯の居住者氏名や、転居した際の住所などの個人情報を公的機関などに照会できる制度の導入を求めた。
具体的には、未契約者について自治体や電気、ガスなどの公益企業に氏名を照会できるようにする。そうすれば、人海戦術によるコストを大幅に減らすことが可能になる。
(3)さらに、テレビを持っていない人にまで届けの義務化まで求めた。
理解に苦しむ要望だが、11月5日の定例会見の場で、前田晃伸NHK会長は「届け出ていただかないと、未設置の人のところにお邪魔するという迷惑なことをやり続けないといけない」と説明した。

   さすがに(3)の要望には、分科会のメンバーからも「テレビを持たない人が届け出ないといけないのは、どういうことか。不利益につながらないか」「テレビを持つことに対するプレッシャーになってはいけない」などと批判の声が上がっていた。

   こうして迎えた11月9日の総務省の有識者会議分科会。さすがにNHKは猛批判を浴びた(3)の「テレビを持たない人の届け出義務化」の要望を自ら取り下げた。そして、残りの(1)と(2)に対して議論が行われた。NHKはテレビ設置の届け出が行われ、受信契約をしていない人の氏名を公益企業などに照会できる制度があれば、受信料の徴収コスト削減や公平負担につながると主張した。

「見たい人とだけ契約するスクランブル放送にして」

NHK受信料の窓口(公式サイトより)
NHK受信料の窓口(公式サイトより)

   一方、分科会の日本民間放送連盟と日本新聞協会の代表は、NHKの要望について、「時期尚早だ」と主張。さらに、「届け出義務化によってテレビ購入が控えられ、テレビ離れを加速させる。放送文化そのものが毀損されれば本末転倒だ」と反対意見を表明した。

   民放連は、ネット動画を視聴するためチューナーなしのテレビを購入する若者が増えている点も挙げ、「国民の理解を得るには、受信料水準を相当引き下げることが重要だ」とした。

   ほかの有識者からも「届け出の効果に疑問がある」「公平負担を目指すなら、不法に支払いを免れた者への割増金制度を導入するのが穏当ではないか」といった意見が出た。

   また、NHKが今年からテレビ番組の同時配信に踏み切ったことに関連し、インターネット視聴者についても受信料の徴収の対象にするかどうかの議論があったが、総務省はまだ受診料を払わせる環境にないとして見送る考えを示した。いずれにしろ、総務省は近く制度改正の方向性を示す。

   NHKが求めるテレビ設置の義務化について、反対意見が多い結果になったがネット上では、こんな声があふれている。

   まず、圧倒的に多かったのが「スクランブル放送にしてくれ」という声だ。スクランブル放送とは、契約した人だけがテレビを視聴できるシステムのこと。日本ではWOWOWなど、BSやCSの一部チャンネルで実施されている。

「行政機関でもないNHKが届け出義務を国民に課すという発想が怖い。取り下げたとはいえ、テレビを持っていない人にも届け出義務化を求めていたとは...。今後はネット配信絡みでPCやタブレット、スマホ、カーナビがあるなら払えって方向に持っていこうとしているのか。それがまかり通るともう支払いから逃れられなくなる。もうスクランブルにしてくれ。見たい人から徴収するのが受信料だよ! なぜ全国民がNHKを支えないといけないのだ?」
「朝とか大河というドラマなんか必要なくて、たとえば『地方創生』等のための放送をしてこそ『公共』じゃないのかな? 今のNHKに公共性は感じない。なぜ観ない局にお金を払わなきゃならないの? それこそ、スクランブルにして観たい人だけみるのが今のデジタル社会、地デジテレビの活用じゃないのか。菅総理は、IT後進国日本のデジタル化を頑張るのではなかったか」
「届け出を義務化して税金のように受信料を徴収したいのなら、まず自分たちの製作費コスト削減から始めたほうがいい。教養番組に高いギャラのお笑い芸人や俳優、女優が必要なの? 娯楽部分も民放に任せればいい。新人女優・俳優のための朝ドラも要らない。アホみたいに豪華なセットを作る紅白もやる必要はない」
「NHKが頑なにスクランブル化を拒否する理由がわからない。現状のままだと、正直に受信契約して受信料を払っている人が、受信料を払わずにNHKを観ている人の分まで支払わされている。都市部では約半数しか正直に受信契約していないと聞く。まったく不公平極まりない制度だ」

   ただ、スクランブル化については、ITジャーナリストの篠原修司氏はこう指摘する。

「『スクランブルをかけて観たい人からだけ徴収すればよい』とは私も思いますが、残念ながらスクランブルには政府側も否定的です。というのもスクランブルをかけると番組ごとの視聴率が出るため、その数字にコンテンツが引っ張られてしまう可能性が高い。NHKも政府も『それでは公共放送と民間放送が同じになってしまう』ことを理由にしています。この前提を頭に入れて声をあげないと、国民の声は聞き入れられないでしょう」

   ちなみにNHKは公式サイトで「よくあるご質問 なぜスクランブルをかけないのか」について、「公共放送として、特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や豊かな文化を育む多様な番組を誰にでも提供する役割を担っている。また、緊急災害時には大幅に番組編成を変更する。スクランブルを導入すると、どうしても『よく見られる』番組に偏り、放送法がうたう『健全な民主主義の発達』の上でも問題がある」などと説明している。

「受信料徴収人が怖すぎる」と一人暮らしの女性

NHK受信料の案内(公式サイトより)
NHK受信料の案内(公式サイトより)

   一方で、もうテレビなど見ないという若い人の反発も多かった。

「ネットの普及でテレビ自体が衰退していく中で、未だ契約強制する必要あるの? 若年層はもうテレビ買わなくなってきていますから、毎年確実にテレビを見る人は減ります。NHKの受信料徴収人が怖すぎるので、一人暮らしの女性などは普通にテレビ持っていない人が多いです。どんどんテレビ自体が売れなくなると思います」
「もはやPC用の液晶モニターで十分な気がする。うちにあるテレビは、PS4でネットやゲームが9割。1割は朝のニュースで電車の運行状況みるだけだけど、これもやめようと思えばやめられるし。今のテレビが壊れたら、次はアンテナないやつ買います」
「テレビ自体がつまらなくて見なくなったと言われている中、NHKが国民に義務を課すなど、勘違いも甚だしい。そのうえ、自治体や公益企業に個人情報を出させようとするとは、何様! と言いたい。テレビの不買に拍車をかけるだけではないか?」

   NHKの今回の「要望の一部取り下げ」についてこんな推測の声もあった。

「要望を修正し、テレビのない人にまで届け出は求めない、ただテレビを設置した場合の届け出は引き続き義務化を求める、とありますね。これは、『テレビのない人にまで届け出は求める』ことが大反対にあうことを前提にした、『テレビ設置者への届け出義務』を通したいがための布石だと思う。『譲歩したのだからこっちの条件は通してくださいね』ということでしょうか。公共放送がなんだかなあという感じがします」

(福田和郎)

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