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都心の高層マンションには「緊張感のある家具」が似合う

07/12/27 コメントを見る・書く(3)
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   「都心の高層マンションに住まう」という新しい暮らし方が数年前から始まっているのに、それに似合う家具も小道具もなかなかない――友人でもある、浪漫堂の倉垣光孝さんの言葉だ。その話を聞いたときは「そんなものかなぁ」と思っていたのだけれど、自分が実際にタワーマンションに住むようになって、納得した。


生活の中に「オン」と「オフ」が混在する時代


artiの内覧会が東京・広尾のショールームで開催された
artiの内覧会が広尾のショールームにて開催された

   広大な夜景はカーテンでふさぎたくない。ソファはテレビを見るためではなく、景色を含めた空間を楽しめる位置に置きたい。覗かれる訳ではないが、開け放っている分、見られている意識も住む側にそなわる。自宅にいるからオフ、という意識にはならない。

   さらに、生活の中に「オン」と「オフ」が混在し、瞬時に入れ替わるようになったと多くの人が感じているはずだ。僕自身、自宅にいても何か思いついた瞬間に仕事のメールを送るし、スタッフも時間などあまり気にせずに、できあがった書類や画像を送ってくる。こちらも目につけばそれに目を通す。時にはこちらも真夜中に返信をする。どこまでが仕事の時間でどこからがプライベートなのか、ほとんどわからない。

   僕たちはこんな時代に生きている。20世紀とだいぶ違ってきている。


多目的な空間を念頭においた家具作り


プロダクトデザイナーのグエナエル・ニコラ氏と「arti」の新しいソファに座りながら語る筆者
プロダクトデザイナーのグエナエル・ニコラ氏(右)と「arti」の新しいソファに座りながら語る筆者

   arti(アルティ)という家具のブランドが誕生した。業務用の家具なのだが、僕がこのところ考えていた「オンとオフが混在する今の暮らし方」というものに対し、とっても馴染みのあるシリーズの展開を考えているようだ。

   プラスやコクヨなど、オフィス家具のメーカーは存在する。またホーム・ユースの家具メーカーにはアルフレックスやカッシーナなどがある。しかし現在の暮らしの中ではこのどちらでもない多彩な空間がある。そこに向けての提案だ、と明確に打ち出したメーカーがこれまではなかったのだ。代わりにインテリア・コーディネーターがオフィス・ユースとホーム・ユースの中からなんとか見繕って、そうした「オフィスとホームの中間のような空間」を作ってきた。

   artiの家具作りは、この多彩な空間を最初から念頭においている。ホテル、店舗、レストラン、スパ、クリニック。それぞれの用途、やって来る人々のテンションとリラクゼーション。それを念頭にシリーズが作られている。そして、テキスタイル・デザイナーの須藤玲子さんと最初の布作りから取り組んでいるという念の入れ方。

   南麻布にこの12月に誕生したショールームのオープニングにお邪魔して、artiのコンセプトをうかがい、まさに今それが必要だと納得した。コンセプトには「ライフスタイルがフュージョンする現代において、多目的に使用されている空間のために誕生しました」とある。タワーマンションで漠然と僕が感じていることをカタチにしていた訳だ。


「東京湾ごしの東京」が似合うソファ


ニコラ氏のデザインしたソファ「Intersect」。大理石のようなテキスタイルが特徴的で、テキスタイル・デザイナーの須藤玲子さんと対話しながら作ったそうだ
ニコラ氏のデザインしたソファ「Intersect」。大理石のようなテキスタイルが特徴的で、テキスタイル・デザイナーの須藤玲子さんと対話しながら作ったそうだ

   会場の中央に、グエナエル・ニコラがデザインした「ホテルのための家具」のひとつ、Intersectというソファがあった。きちっと座るべきカタチなのだが、座る向きによって会話軸がねじれたりする面白さがある。ニコラらしいひねりだ。一見大理石のような表情のモノクロのテキスタイルも利いている。

   ふと想像をめぐらせ、そのソファの背景に「東京湾ごしの東京」を置いてみる。よく似合う。タワーマンションにほしいのも、こういう緊張感のある家具なのだ。考えてみれば、隣人との会話もあまりないタワーマンションでの生活は、ホテルでの生活と似ている面がある。リラックスしているところに突然仕事がメールでやってきて、すんなりと仕事に戻ったりするには、部屋にも緊張感がないといけない。

   artiの提案は確かに商業空間や公共空間への提案だが、今日の暮らし方によく合った提案だとも言えないか。今の暮らし方から家具をもう一度考える。そこには実は新しい領域が広がっている。

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