アジアで最も若い国、東ティモール 国づくりは水と衛生の整備から
王子ネピアは、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復を支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトの背景や関係者の思いを、6回シリーズで描く。
「家庭の衛生にかかわる商品を届ける企業として、世界の衛生問題に取り組もう。そんな思いからプロジェクトを立ち上げました」
王子ネピア・林孝治社長は、6月19日に開かれた「nepia 千のトイレプロジェクト」記者発表の席でこう明かした。東ティモールに清潔なトイレを設置し、衛生状態の改善を促進することで国づくりに貢献する−−。国際連合が定めた国際衛生年の今年、王子ネピアのユニークな取り組みが始まった。
暴動で破壊されたライフライン
小学校でトイレは一つだけ

小学校のトイレ。便器の横にある水槽に水をためて流す仕組みだが、水道が故障して使えない
東ティモールの首都ディリ近郊にある、タシ・トル地区の小学校。教室からは、子どもたちの元気な歌声が聞こえてくる。その表情は明るく、笑顔が絶えない。
しかしこの学校には、使えるトイレが一つしかない。ほかのトイレは故障し、修理の見込みも立たず放置されたままだ。「大勢の児童がいるのに、トイレはたった1カ所。とても不便です。低学年の子が、我慢できずにお漏らししてしまうこともあり、本当にかわいそう」と、校長のフィロメナ・カスミラさんはため息をついた。
2002年に独立した東ティモールは、オーストラリアの北側に浮かぶティモール島の東半分で、人口約104万1000人のうち99%以上がキリスト教徒だ。独立の際の混乱で約20万人が避難を余儀なくされた。公共の建物や個人の住居の70%が破壊され、あらゆる公的サービスも停止。独立後も、2006年に大規模な暴動が発生し、ディリをはじめ各地で給水設備などのライフラインが大きな損害を受けた。タシ・トルの小学校でも、給水タンクや井戸が暴動で壊され、今でも水が必要になると500メートルほど離れた水場まで行かねばならないという。
「水と衛生設備が限られているうえ、整備も遅れている」と話すのは、教育省の学校保健プログラムコーディネーター、パウロ・ボニファシオ・ソアレス氏。2006年のユニセフの調査では、農村部人口の77%がトイレを利用できない状態で、61%の学校がトイレと給水設備の改善が必要と指摘されている。
下痢やマラリアに苦しむ子どもたち
トイレの普及が予防のカギに

ディリ郊外にある小学校で学ぶ子どもたちは、明るく人なつっこい笑顔を見せた
ユニセフ東ティモールの保健・栄養・衛生部長、モンジュール・ホサイン氏は、「不衛生な環境が原因で、下痢やマラリアに苦しむ子どもが多い」と話す。小学4年生のベンディート・ダ・コスタ君も、下痢に苦しんだ一人だ。配水管の故障で自宅への給水が止まり、トイレが使えないこともしばしばだと言う。同級生のアルベルト・ペレイラ君は、「弟が下痢になり、咳もひどかった。治るまで1週間かかった」と振り返る。
ユニセフは2006年、「水と衛生に関する支援活動」を開始した。2年間で給水システムの整備や、1550世帯に水洗式トイレを設置する一方、住民に衛生習慣を定着させる教育を実施している。ホサイン氏は、「住民が衛生への意識を高め、病気が減れば、他の村の人々もその重要さを理解する」と考える。
この活動を促進するのが、「nepia 千のトイレプロジェクト」だ。王子ネピアの製品の売り上げの一部がユニセフに寄付され、トイレづくりのために活用される。現地の人々は「水や衛生設備の不足に悩んでいる東ティモールの現状を、多くの日本の皆さんに理解してもらいたい」と声を上げている。王子ネピアのチャレンジに、期待が高まっている。
nepia 千のトイレプロジェクト
王子ネピアが日本ユニセフ協会とともに、開発途上国のトイレと水の問題を解決するために立ち上げた支援プロジェクト。2008年7月1日〜10月31日のキャンペーン期間中、ネピア商品の売り上げの一部がユニセフの「水と衛生に関する支援活動」をサポートし、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復に活用される。
王子ネピア株式会社
1971年、王子製紙の全額出資により設立。ティシュペーパーやトイレットロール、紙パルプ加工品、紙おむつの製造・加工・販売を手がける。