シルクロードを守る日韓中の絆 現地で文化財保護の人材を育てる

2008/7/11      このエントリーを含むはてなブックマーク はてなRSSに追加 この記事をBuzzurlにブックマークする この記事をクリップ!   Yahoo!ブックマークに登録   newsing it!    
samsung 東西文化を伝えたシルクロード遺跡

東西文化を伝えたシルクロード遺跡が風化・崩壊するのを救う一助とするため、日本サムスンが文化遺産を守る専門家を育てるプロジェクトに取り組んでいる。

「サムスン・シルクロード文化財保護フェローシップ」は、日本画家の平山郁夫氏が、文化遺産を守るために国境を越えて協力し合う必要性を訴えた「文化財赤十字構想」に共鳴し、2005年に設立された。「人材第一」を理念とするサムスンらしく、その骨子は、シルクロードの文化遺産を保護・修復する若手の専門家の育成である。

約2、3カ月間で保護・修復技術を習得
5年間でのべ100人の育成を目指す

実地研修で遺跡の保護・修復技術を学ぶ中国の研究者(写真提供:東京文化財研究所 岡田健氏)
実地研修で遺跡の保護・修復技術を学ぶ中国の研究者(写真提供:東京文化財研究所 岡田健氏)

 2006年5月、中国各地から集まった若手の研究者26人を対象に文化財保護の研修が始まった。中国文化遺産研究院と東京文化財研究所が共同でプログラムを実施する。1年目の土遺跡保護修復班は2カ月で基礎理論と陝西省西安市郊外杜陵での実習、3カ月コースの陶磁器・金属器保護修復班は基礎理論と修復実習を学んだ。講師は中国だけでなく、日本からも専門家を派遣した。陶磁器・金属器保護修復班に参加した西北大学文博学院講師の凌雪氏は、「中国国内には、文化遺産保護の熟練技術者が乏しい。研修で多くの知識を得られました」と話す。土遺跡保護修復班は、中国6省から15人の研究員が参加し、日本・中国の専門家が講師を担当し、これまで1年目2カ月、2年目3カ月と保護・修復のトレーニングを積んできたが、今年は最後の2カ月間の日程で甘粛省瓜州の砂漠に遺された墓闕を対象とした現場トレーニングを実施し、この10月末に修了式を迎える。
 翌07年は考古発掘現場保護修復班がスタート。参加者は、陝西省韓城市の現場で出土した4頭の馬の骨を土ごと取り上げるなどの作業に携わった。
 ほかにも建築物、紙、壁画、染織品とさまざまな分野でプログラムを順次開講し、文化財の保全方法を教育する。育成する人数は各分野で12~15人、全体では5年間で100人が目標だ。受講者は研修後、所属する研究機関や大学に戻って、身に付けた技術や理論を伝える役割も期待されている。

学生ツアーや寄付講座も開く
「人材第一」の理念を実現

 同フェローシップは、平山氏が理事長を務める財団法人文化財保護・芸術研究助成財団に基金を置いて創設された。中国サムスンの寄付に加え、日本サムスンではフェローシップの賛同者を広く一般から募り、集められた寄付金を同基金にすべて寄付している。賛同者には、平山氏が描いたシルクロードの絵画を用いたオリジナルカレンダーを贈呈。5年間で完結するカレンダーの第1弾は、2006年版のシルクロード東端・奈良から出発、カレンダーをめくると西へ向かい、10年版の最後は西端・ローマに到達する編集になっている。
 中国での専門家育成に加え、日本人学生を対象にしたシルクロード視察ツアーも行っている。将来、文化財保護に関連する仕事に就こうと考える学生に、シルクロードの現状に触れる機会を提供する。ここで同じ志を持つ中国の学生との交流の場を設け、日中の若者が文化財保護のあり方について意見の交換もする。
 早稲田大学・平山郁夫記念ボランティアセンターでは、06年6月から寄付講座を開講している。平山氏の特別講演や、中国で専門家育成に携わる運営者も教壇に立ち、現地の様子を話す。07年度からは、所属学部にかかわらず誰でも受講できる「オープン科目」としての単位取得が認められた。
 サムスンは創業以来、「人材第一」を掲げ、人類社会への貢献を経営の理念としている。フェローシップも、将来にわたって文化遺産を守り、伝えていくうえで人材育成を目指している。
 シルクロードは中国、朝鮮半島を通って日本に文化を運ぶ道だった。日本サムスンではこのプロジェクトを通じて、日韓中の絆がより強くなればと考えている。平山氏も、「日韓中の3カ国が協力して、共通する文化の源流を守る意義は大きいと思います。今回のフェローシップを機に、日韓中から世界に文化財保護の波が広がることを心から願っています」と話している。

samsung サムスン・シルクロード文化財保護フェローシップ
日本画家・平山郁夫氏が提唱する「文化財赤十字構想」に共鳴し、日本サムスンが2005年6月に立ち上げたプロジェクト。風化、崩壊の危機にさらされているシルクロード文化遺産の保護を支援するため、遺跡保護・修復の若手専門家を5年間で100名超育成することを目指す。一般から広く寄付を募り、趣旨に賛同いただいた方には平山氏のオリジナル・シルクロードカレンダーを贈呈する。寄付金は平山氏が理事長を務める財団法人文化財保護・芸術研究助成財団に設立した基金に寄付し、文化財保護の専門化育成のために使われる。今年の寄付募集は8月末から開始。2009年版カレンダーにはチベットからインドにかけての絵画が収まる。

日本サムスン株式会社
サムスングループ初の海外拠点として、1953年に東京で創立。サムスン電子をはじめとするグループ企業と日本企業との間で、エレクトロニクス関連の部品や素材、製造装置等の輸出入等を行う。現在では約5,000社の日本企業と取り引きしながら、日本と世界のビジネスの橋渡し役を担う。

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