子どもたちの命を守るために 東ティモールにトイレをつくろう
王子ネピアは、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復を支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトの背景や関係者の思いを、6回シリーズで描く。
2007年6月、東京都内の小学校で、低学年を対象にした特別授業が行われた。その名も「うんち教室」。王子ネピアと日本トイレ協会が協力して、うんちが体にとっていかに重要かを子どもたちに教える目的だ。講義だけでなく、おがくず粘土を使った「うんちえんぴつ」づくりや、教室終了後に「うんち日記」を配って1週間の食事と排便の様子を子どもに記録させるなど、工夫をこらす。
企画の中心の一人が、王子ネピア・マーケティング部長の今敏之氏だ。同氏は、東ティモールの衛生改善を支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」のリーダーでもある。うんち教室での取り組みの経験を、海外で衛生問題に悩む人々のために生かそうとプロジェクトを立ち上げたのだ。
「衛生教育は本当に大切だ」
昨年スタートの「うんち教室」で実感

小学校を訪れ、「これほど大歓迎されるのはめったにありません。感動しました」と今氏(写真右)
「最初の教室で、子どもたちを前に『うんちの話をします』と言ったら一人が『ウェー、汚い』と大騒ぎしました」と今氏は振り返る。「それでも、健康な毎日を送るためにうんちは大切だと真剣に話し続けたら、子どもたちも『そうか、うんちをするのは恥ずかしくないんだ』と明るい表情になったのが分かったのです」。共にうんち教室を運営する日本トイレ協会理事・加藤篤氏は、「親御さんから、『子どもが好き嫌いをしなくなった』『学校でトイレに行けるようになった』といった声が寄せられています」と話す。
うんち教室が軌道に乗り始めたある日、今氏は知人から「海外には、トイレがないために命を落とす子どもたちがいる」と聞かされた。同じ頃、日本ユニセフの職員を紹介され、ユニセフが各国で実施している「水と衛生に関する支援活動」を知った。水道や衛生設備を提供するだけでなく、住民に衛生習慣を定着させる教育も行う活動だ。うんち教室を通して教育の大切さを実感した今氏は共感し、ユニセフへ協力を申し出る。王子ネピアがトイレットペーパーのメーカーであることもあって、衛生面の改善を支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」が生まれた。
トイレのない生活のつらさ
日本人が考えるキッカケにしたい

「東ティモール版うんち教室」で、加藤氏(写真左)は「うんち王子」に扮し、子どもたちに大人気だった
2008年4月、今氏は東ティモールを視察に訪れた。人々は笑顔を絶やさず、村や学校を訪問するたびに、誰もが着飾って歓迎してくれた。「本当に感激しました。でも…」。素敵な民族衣装を着ていた子が、別の日に会うと汚れた古着を身にまとっていた。
同行した加藤氏は、「トイレはあっても壊れて使えないものが多い。野外排泄が増え
ることは病気の蔓延にもつながる最悪の状態です」と言う。一方、現地の小学校でうんち教室を開くと、最初は戸惑っていた子どもたちが、「うんちは大事」とのメッセージを最後は理解した。「子どもたち自身も清潔でありたいし、プライバシーを守りたいと思うのは当然。その意識を行動に移すには、トイレの設置はもちろん、『トイレの必要性を理解し、トイレをきれいに維持することと、手洗いを徹底できれば、病気にかかりにくい』ということを楽しく学び、体験することが重要です」と強調する。
今氏は、プロジェクトの実現のために社内の理解を得ようと、東ティモールの状況を撮影した映像を上司に見せて説得した。6人の子どもがマラリアを患ったことを告白する母親、「病気で長期間学校を休む子どもがいる」と悲しい表情を浮かべる教師。「現地の厳しい事情を目にすると、上司も共感してくれました」と言う。プロジェクトでは、東ティモールにトイレを建設し、住民の衛生教育の支援を目的とする。今氏は「日本のお客様一人ひとりにとって、トイレがなくて苦しんでいる人のことを考えるキッカケとなるようにメッセージを伝えたい」と意気込む。
nepia 千のトイレプロジェクト
王子ネピアが日本ユニセフ協会とともに、開発途上国のトイレと水の問題を解決するために立ち上げた支援プロジェクト。2008年7月1日〜10月31日のキャンペーン期間中、ネピア商品の売り上げの一部がユニセフの「水と衛生に関する支援活動」をサポートし、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復に活用される。
王子ネピア株式会社
1971年、王子製紙の全額出資により設立。ティシュペーパーやトイレットロール、紙パルプ加工品、紙おむつの製造・加工・販売を手がける。