ネピアならではのCSR 社員発の「トイレで社会貢献」
王子ネピアは、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復を支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトの背景や関係者の思いを、6回シリーズで描く。
「女性の先輩社員から、『涙が出そうになったわ。東ティモールの子どもたちが、トイレでこんなに困っているなんて知らなかった』と言われたのです」
こう話すのは、王子ネピア・マーケティング部の高瀬智子氏だ。「nepia 千のトイレプロジェクト」の事前視察で東ティモールを訪問、現地の様子を撮影し、帰国後に社内で上映会を開いた。子どもたちのはじける笑顔とは対照的に、5歳未満児の死亡率が出生1000人あたり130人(※)という厳しい現実が流れる。会に参加した一人の女性社員が後日、廊下で高瀬氏を呼び止めて「泣きそうになった」と話したのだ。高瀬氏は思わず「学校のトイレが壊れて使えないんです。マラリヤや下痢で苦しむ子どもも大勢いました」と、さらに詳しく様子を説明した。
「映像を通じて、トイレの不備で命を落とす人がいる東ティモールの現状を理解してもらえました。社内での共感が深まったと思います」と高瀬氏は話す。
「CSRは重要だが余裕がない」
社内の反対にも粘り強く説得

「トイレでCSR」を推進する王子ネピア・マーケティング部の齋藤氏、今氏、高瀬氏(左から)
プロジェクトは、高瀬氏の上司の今敏之氏が持っていた「社会的に意義のある活動を通して、会社をアピールしたい」との思いが原点だ。「親会社の王子製紙は、企業の社会的責任(CSR)として、紙の原材料となる木材を植林しています。僕は『便所紙屋』ですから(笑)、トイレにまつわる独自のCSRを立ち上げようと思ったのです」
第一弾として2007年、「うんち教室」をスタートした。首都圏の小学校低学年を対象に、うんちを通して健康や食について学ぶ「特別授業」を開いている。「学校では恥ずかしくてトイレでうんちができない子がいる。トイレットペーパーを作るネピアにとって、トイレで困っている子を助けるのは意義深い」と考えた今氏が、日本トイレ協会の協力を得て実現した。高瀬氏、斎藤敬志氏の三人も、日本トイレ協会と共に学校を回り、「うんちは恥ずかしくない」と話している。
うんち教室を実施する中で三人は、海外で深刻な衛生問題に悩む人々が大勢いると聞いた。「うんち教室の経験を生かして、海外でもネピアが貢献できないか」と考えた矢先、ユニセフが海外でトイレの建設と衛生習慣の定着のプログラムを運営していると知る。ここから「nepia 千のトイレプロジェクト」の計画が具体化していく。
だが、実現に向けて社内で理解を得るのは容易ではなかった。関係部署に相談すると、「CSRは重要だが、支援する余裕はない」との反応。だが今氏は、「目先の利益ばかり追っていては、社員はやがて行き詰ってしまう」と感じていた。「貢献活動が成功すれば社員は満足感を得られ、業務へのやりがいや意欲も高まるはず」との信念で粘り強く社内調整を続けた結果、会社からゴーサインを取り付けた。
グループ全体でバックアップ
支援に対する共感の輪が広がった

東ティモールを訪れた高瀬氏は、現地の女性から家庭の衛生事情を説明してもらった
今年4月、三人は支援対象国に決まった東ティモールを視察した。山あいの村の小学校を訪れ、歓迎式典で村長や校長先生の挨拶を聞いた齋藤氏は胸を打たれた。「必死になって『私たちにはトイレが必要です』と訴える姿に、期待の大きさを実感したのです」。高瀬氏も、「子どもたちがトイレの心配なく勉強できる環境を整えたい」と強く思った。
帰国後に開いた社内上映会をキッカケに、社内にはプロジェクトを応援する雰囲気が高まった。齋藤氏には、営業の社員からプロジェクトの具体的な問い合わせがくるようになった。王子製紙グループとしての支援も決定。「トイレをテーマにしたCSRを、グループ一丸となって進められるのはうれしい」と三人は喜んだ。グループ内に共感の輪が広がったと手ごたえを感じた。
7月1日、スーパーやドラッグストアの店頭に、東ティモールの子どもたちの写真が入ったティシュやトイレットペーパーのパッケージが並び始めた。今氏は「製品を通じて多くの人にプロジェクトの意義を伝え、共感してもらいたい。一人でも多くの子どもの喜ぶ顔が見たいから、たくさん売ってかせいで(笑)、より多くの支援を現地に届けたいですね」と笑顔を見せた。
※ユニセフ東ティモール事務所調べ
nepia 千のトイレプロジェクト
王子ネピアが日本ユニセフ協会とともに、開発途上国のトイレと水の問題を解決するために立ち上げた支援プロジェクト。2008年7月1日〜10月31日のキャンペーン期間中、ネピア商品の売り上げの一部がユニセフの「水と衛生に関する支援活動」をサポートし、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復に活用される。
王子ネピア株式会社
1971年、王子製紙の全額出資により設立。ティシュペーパーやトイレットロール、紙パルプ加工品、紙おむつの製造・加工・販売を手がける。