下痢で命を落とすという現実 今が最も支援が必要とされるとき
王子ネピアは、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復を支援する「nepia 千のトイレプロジェクト」を立ち上げた。プロジェクトの背景や関係者の思いを、6回シリーズで描く。
王子ネピアとユニセフが協力して推進する「nepia 千のトイレプロジェクト」。最終回は、支援の現状についてプロジェクトを指揮する王子ネピア・林孝治社長と、ユニセフ東ティモール・久木田純代表に話を聞いた。
良質の商品を提供し、そこにプロジェクトへの思いを込める
王子ネピア・林孝治社長

林社長は、「当社のCSR活動を、多くの人に知っていただきたい」と話す
「nepia 千のトイレプロジェクト」の話を最初に聞いたとき、「なぜ東ティモールに支援なのか」と思いました。現地の事情をほとんど知らなかったのです。担当者に聞くと、トイレの不備で困っている人が大勢いるという。一方で当社は、昨年から首都圏の小学校で「うんち教室」を開いており、親御さんから評価されています。「日本だけでなく、海外でトイレに困っている人を助けたい」と考え、ゴーサインを出しました。
プロジェクトは、王子製紙グループが全面協力しています。グループでは、植林をはじめ紙ごみの減量、割りばしを回収して紙の原料にする取り組みを続けています。2004年には企業の社会的責任(CSR)の指針として、「企業行動憲章」を定めました。しかし、紙は木材からつくるため、製紙会社は木々を伐採して森林を破壊するイメージを持たれる場合もあります。会社の考え方やCSR活動を正しく発信しないと、消費者の誤解を招きかねません。プロジェクトは、「ものづくりを通じて社会貢献する」というグループの理念を体現しており、商品を通じて多くの人に当社の考えを伝えられると考えました。
実施にあたっては、社内で「コストがかかるのに大丈夫か」との懸念も出ました。しかし私は、東ティモールの衛生事情を一人でも多くの消費者に知ってもらうことが重要だと考えました。当社がどのような形でCSRを推進しているかも理解してもらえると思います。製造工場にも「コストは心配するな。世間に当社の姿勢を示すことが大切なんだ」と説明しました。
幸いにも、流通や販売店からは好意的に受け止められました。ある消費者の方からは当社の「お客様相談室」に電話で「いいことをしているのだから、がんばって営業してよ」と激励をいただきました。ありがたいことです。私自身、お盆に奈良にある妻の実家に寄ったときに、義母から「新聞に広告が載っていたよ」と言われました。徐々にプロジェクトが世間に知られはじめたと感じます。
プロジェクトに先駆けて寄付を行い、今秋トイレの建設が始まります。1000個のトイレをつくる意義は大きいですが、まだまだ足りないでしょう。だからこそ、プロジェクトを継続させなければなりません。当社ができることは、お客様に満足いただける良質の商品を提供し、そこに我々の東ティモールの人々への思いを込めること。単に「買ってくれ」では理解は得られません。一つでも多くのトイレを東ティモールに届けたいという当社の思いを広く販売店、消費者の皆様に共感してもらえるよう、努力してまいります。(談)
「トイレブームを起こしたい」
ユニセフ東ティモール・久木田純代表

「この国の衛生問題は、最速のスピードをもって改善できるはず」と語る久木田代表
「下痢で命を落とす」。日本では考えられないでしょう。しかし、東ティモールでは、子どもたちが平均で年に7回、不衛生な環境が原因による下痢に苦しんでいます。山村の住民は、診療を受けるために最寄の医療施設まで自宅から何時間も歩かなければなりません。
状況を打開するため、ユニセフでは2000年に「水と衛生に関する支援活動」を開始し、学校や家庭にトイレの設置を進めています。首都ディリ近郊のある山村にトイレを建設したときは、村民の一人が「これでディリと同じ生活水準になった」と笑顔を見せました。
衛生の改善には、住民の意識の向上と、彼らが自分たちで費用を負担し、維持管理できるトイレを提供することが重要です。私は以前、アフリカのナミビアに赴任した際、最初にすべての小学校にトイレを建設し、衛生教育を行いました。次に、比較的裕福な家庭を対象に、やや高額なセメント造りの「VIPトイレ(換気式改良型便槽トイレ)」を建設しました。これを見た人々は「自分たちもトイレがほしい」と感じるようになったのです。そこで、一般家庭でも費用が負担できる廉価型のトイレのモデルを導入し、各家庭を回る村の保健員に、住民の衛生教育とトイレの宣伝を頼んでみました。反響は大きく、一気に「トイレブーム」が起きて、ほとんどの家庭にトイレができました。バングラデシュでは、「すべての学校と家庭にトイレを」という活動を行い、目標を達成した郡を表彰するために何度も現場へ足を運んだのを覚えています。今回、「nepia 千のトイレプロジェクト」を契機に、東ティモールでもトイレブームを巻き起こせると期待しています。
この国は1999年にインドネシアの統治から解放された際、多くの施設が破壊され、その後も社会的に不安定な状況が続きました。他の東南アジア諸国と比べて、何十年も発展が遅れていると言わざるを得ません。一方で、人口の半分が18歳未満という若い国であり、潜在力は高い。未来を担う若い世代の命と健康を守るためには、今が支援が最も必要とされ、成果が生み出せるときなのです。今を逃しては、この国の発展に欠かせないエネルギーはしぼんでしまうでしょう。
トイレの普及率が世界でもずっと遅れをとっているこの国で、「千のトイレ」は数字の上でも勇気づけられます。プロジェクトが起爆剤となり、早いスピードで厳しい衛生状態を改善できるよう、ユニセフも取り組んでいきます。日本の皆さんにも、東ティモールの子どもたちの生活が向上するように協力していただければ、うれしく思います。(談)
王子ネピア株式会社代表取締役社長・林孝冶(はやし・こうじ)
東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1971年王子製紙入社。洋紙事業本部長、春日井工場長などを経て今年4月より現職。
ユニセフ東ティモール代表・久木田純(くきた・じゅん)
福岡県生まれ。九州大学大学院教育心理学修士。1986年ユニセフ駐モルディブ事務所に赴任。以後東京、ナミビア、バングラデシュ、ニューヨークを経て2007年9月より現職。
nepia 千のトイレプロジェクト
王子ネピアが日本ユニセフ協会とともに、開発途上国のトイレと水の問題を解決するために立ち上げた支援プロジェクト。2008年7月1日~10月31日のキャンペーン期間中、ネピア商品の売り上げの一部がユニセフの「水と衛生に関する支援活動」をサポートし、東ティモールで1000の家庭のトイレの建設と15の学校のトイレの建設または修復に活用される。
王子ネピア株式会社
1971年、王子製紙の全額出資により設立。ティシュペーパーやトイレットロール、紙パルプ加工品、紙おむつの製造・加工・販売を手がける。
nepia 千のトイレプロジェクト アンケート&プレゼント
現在、
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