発酵を通じて、食べ物を育てる・楽しむ「The Ferment」とは

従来の製品は購入した後の、顧客に対するコミュニケーションは製品が担うことになっている。今回、パナソニック アプライアンス社が推進する新規事業開発プロジェクト「Game Changer Catapult(以下GCカタパルト)」に選出された家電プロジェクト「The Ferment」は、製品を購入した後も毎月食材が届き、ユーザーと継続的につながるビジネスモデルとなっている。家電の枠組みを超えた、新たな顧客コミュニケーションを作り出そうとする「The Ferment」。北米のサウス・バイ・サウス・ウエスト(以下SXSW)というイベントでの体験会も決定し、製品化まで秒読み段階だ。今回は、開発チーム山本尚明さん、浦はつみさん、關智子さん、真貝雄一郎さんに話を伺った。

プロジェクトメンバーの皆さん。左から真貝雄一郎さん、山本尚明さん、浦はつみさん、關智子さん


プロジェクトのスタートは社員の自主研究から

GCカタパルト以前からプロジェクトが開始した「The Ferment」。従来型サービスから脱却し、新たな発酵ジャンルの製品を作ろうとしている。コンセプトや製品完成度が高い本製品は、聞くだけで新たな家電の世界を開く可能性を感じた。まずは、プロジェクトのキッカケを伺う。

山本「『The Ferment』のプロジェクト開始は5年前(2012年)からになります。実はGCカタパルト参加前から、『The Ferment』の研究は開始していました。新しい調理やライフスタイルの提案をしたいと考えており、その中でも「発酵」という部分に着目して自主研究を開始しました。その中で、3年前(2014年)に浦の調理家電の新しい企画と組み合わさってプロジェクト化していきました」



浦「発酵管理がどの様に家電となっていくか、まずはプロトタイプを作成し検討しました。センサー&スティックを使ったモデルで、スティックの先に着いたセンサーで温度を調べます。食材の温度を測りながらユニット側で設定情報に基づいた発酵のコントロールが可能です」


山本「昔は日本各地の家庭で発酵食品を作っていたものの、現在ではその文化が失われています。その為、発酵させるために必要な食材や菌などをセットで届ける様なビジネスモデルを併せて考案しました。当社で製品化したコーヒー焙煎機『The Roast』のGREEN BEANSと呼ばれる生豆を毎月届けるモデルとも非常に似ています」

關「マーケティングにおいても、一芸家電が段々と注目されてきた良いタイミングでした。多機能の健康調理家電も大切ですが、発酵というジャンルでプロジェクト化する事が軸となっていました。また、もうひとつの軸として大事にしたいと考えていたのは、食材の繋がりです」



真貝「食材を届ける為には、産地との繋がりが必要です。また産地だけでなく誰がどんな形でそのモノをつくっているのかという、パートナーから届けるという繋がりも背景としてあります」

ひと手間かかる発酵食品を料理未体験の人に届けたいというチームの想い

近年、「菌活」と呼ばれる発酵食品ブームが沸き起こっている。スーパーの麹味噌コーナーは売り切れが多発したり、自宅で甘酒を作る為のワークショップが開催されたり、雑誌で塩麹レシピが掲載される。ブーム以前から温めてきた「The Ferment」プロジェクトの完成形はどうなるのだろうか。

山本「現在最終モデルとしている『The Ferment』は、発酵を管理する家電です。2重ガラスで覆われた発酵機ユニットと温度管理デバイスの構成で管理します。食材を投入したパウチに温度管理デバイスを取り付け、本体の中に投入。スマートフォンで調理プログラムを本体ユニットに送信し、発酵に最適な温度管理を実施します」


浦「サービスの全体の流れとしては

① 食材キットを受け取る

② 発酵機ユニットに食材を投入

③ スマートレシピで発酵のさせ方を転送

④ 完成になると通知がくる

という想定しています。

従来発酵食品を普段作っていない潜在ユーザー層にも、手軽さ訴求していきたいです」



真貝「発酵というのを体験した事がない人だけでなく、料理をほとんどした事でも使用点を訴求していきたいと考えています。本製品を導入することで、趣味として食に関わりたいと思っている男性や、家族の家事分担のキッカケとなるのではないかと思っています。もちろん、今まで料理にこだわってきた人や時短したい人にも、こだわった食材が届く様なサービスとしていくつもりです」

山本「食材や菌などについては、菌ひとつ異なるだけで発酵のタイミングやできる食べ物の良さが失われてしまう事があります。その為、原型として決まったものを、決まった形で作ることのサポートから考えたいと思っています。食材キットとして鰆と塩こうじを送り、『The Ferment』が一つの料理を完成させるイメージです。購買や調理指示だけなく、農家や麹屋さんなどのストーリーなども併せてスマホを通じて配信していく予定です」



浦「どれだけ発酵に特化した家電にニーズがあるのか?サービスとしての需要があるのか?を見つけにくいという点がビジネス展開していく上で難しい点です。一時的なニーズを満たす家電にはしたくない為、広く世間とコミュニケーションを取っていき必要な機能や要件を固めていきたいと考えています」



山本「衛生管理などについても通常の家電と異なる為、密に顧客とコミュニケーションを取っていく必要があると考えています。発酵する際の温度管理や食材の賞味期限など、一緒に発酵文化を醸造していかなければ成り立たないサービスとも考えています」


ブクブクと発酵文化が発展していたくためのキッカケとなって欲しい

山本「当初、アメリカでの展示においては、発酵が受け入れられるか疑問でした。ですが、調べてみると、アメリカでも発酵食品は毎日食べられている事がわかっています。キュウリのピクルスはハンバーガーやホットドックには欠かせない調味料ですし、ザワークラウトもドイツ起源ですが一般家庭に浸透しています。発酵食は、栄養の吸収や消化を助け、旨味成分も増えるスーパーフードとして認知されています。

アメリカ全体として、とにかく食にこだわっているという層と食事は手軽に済ませたいという層の二極化が激しくなってきています。腸内環境をより高めたいという人や、作るのであればとことんこだわりたい人達に対して訴求していきたいと考えています。それこそ、オーガニックファームごとに比較している層や自家菜園にこだわる層が一定数いるわけですから十二分にニーズがあると考えています。SXSWのパナソニックの展示場所はレストランを予定しているので、新たな食のライフスタイルとしての訴求に力を入れたいです」



浦「キャッチコピーは、Unleash the Power of Fermentation。日本語だと発酵を解き放てといった事葉にしています。全体のデザインコンセプトは泡のブクブクをイメージしています。いい食べ物や、いい作り方というものはしっかり受け継ぎ、広げていける可能性があると思います。『The Ferment』を通じて日本に限らず世界的に発酵文化が注目される事を期待しています」



關「最終モデルでは、キットにもとづき発酵ができるかたちが基本形になっています。このモデルが多くの人に受け入れられたら、麹だけを送って、ユーザー側がレシピを作るコミュニティ形成や、認証レシピを定期的に配信していきたいとも考えています。『The Ferment』はセンサーや本体の機能を全てスマホ連携としているのもその為です。レシピダウンロードだけでなく、実際のセンサーデータや調理プログラムデータをアップロードする事など行えることが色々あるのも、この製品の優れた点です」



山本「理想を言えば2018年を目処に商品化を実現したいと考えています。外部の方々や、日ごろ発酵について触れている人達からも、多大なご支援を頂いている状況です。面白そうだという方々と一緒に発酵文化とコミュニティを作っていきたいとも考えています。また製品をブラッシュアップすると共に、他メーカーや麹屋、料理関係者などとの関係性をより深くしていく予定です。人が学び合ったり質問出来たりする。そうした場所づくりというのを、『The Ferment』をハブにして実施していきます」



従来の家電ビジネスから脱却し、サービス全体を作ろうという「The Ferment」の熱い想いがインタビューの中でヒシヒシと感じられた。調理家電というと時短や効率性が評価されがちだが、こうした菌やスローライフに適した家電の方がこれからのニーズがあるのかもしれない。今後の「The Ferment」の商品化が楽しみで仕方ない。



文・写真:佐藤大介



第1話

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第2話
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第3話
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パナソニック株式会社 アプライアンス社

代表者: 本間 哲朗
URL: http://panasonic.co.jp/ap/index.htm
住所: 滋賀県草津市野路東2-3-1-1号
概要: 家電領域におけるコア技術の研究・開発、
            顧客ニーズに応える商品企画、効率性の高い生産システムの構築。
            

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