黒いまな板に、黒い綿棒、そして黒いトイレットペーパー。これまで「白」が当たり前とされていた商品に次々と「黒」バージョンが登場している。ファッションも食品も黒が大流行だ。この「黒ブーム」、2008年も続くのだろうか。
圧縮タオルや圧縮Tシャツを製造販売している広島の会社「光」は07年11月、真っ黒な軍手と靴下とタオルをひとまとめにしてギュッと固めた「圧縮パック」を売り出した。名づけて「男の黒」。黒い靴下やタオルは普通だが、黒い軍手というのは珍しい。
サイズは縦11センチ、横7センチ、厚さ3.5センチ。肉体労働には欠かせない3点を簡単に持ち運びできるように、タバコの箱をひと回り大きくした直方体の形に圧縮した。「インテリアやファッションで黒がはやっているし、黒という色はカッコいい。とにかく黒い色の圧縮セットを作ろうと思った」と光の福場英治社長は話す。
一方、「黒いティッシュペーパーを全国発売する」と07年12月に発表して話題を集めたのは大昭和ファーストだ。
「うちはティッシュペーパーやナプキンなど薄い紙製品に色をつけるのが得意。その技術力をアピールするために、普通の色とは正反対の黒のティッシュペーパーを作ってみようということになった」
薄いティッシュペーパーの柔らかさを保ったまま濃い色を定着させるのには高度な技術がいる。水にぬれても色がにじみ出ないようにする必要もある。いくつかの課題をクリアーして商品化するまで1年かかった。
価格は1箱500円と普通のティッシュに比べれば割高だ。しかし、同社は「実用品というよりは、インテリアの一部として使ってもらいたい」とファッション性をアピールしている。
食品の世界に目を転じてみても、黒烏龍茶や黒酢、黒胡麻アイスなど「黒」を頭につけた食べ物がやけに目立つ。なぜこんなにも「黒」がモテるのか。日本ファッション協会の流行色情報センターにたずねてみた。
「おそらく、最近の『高級志向』と関連しているのだと思います。黒はフォーマルな色と意識されていて、『高級』『本物』というイメージを持っています。そこで、高級感を強調したいときに黒がよく使われるのです。たとえば、カカオを多く使っているチョコレートを『本物のチョコ』とアピールしたいときに黒のパッケージを使う、というように」
いまは「プレミアム」な商品をありがたがるプチバブルな時代。そんな世の空気と「黒」は相性がいいようだ。時代性といえば、2007年にオープンして評判を呼んだ東京ミッドランドに象徴される「都会志向」も黒ブームと関係があるらしい。
「黒はシックでエレガントな色というイメージがあるので、都会的なイメージと重なります。すべてのものに高級さや贅沢さ、都会性を求めるムードに黒は合っているのではないでしょうか」
同センターによれば、2008年も「黒」は重要な色として期待できるということだ。
だが、こんな黒ブームのなか、異彩を放っている存在がある。
携帯電話業界の革命児・ソフトバンクモバイルの「ホワイト」プランだ。コマーシャルに登場する「白」い犬の活躍もあって、契約の純増数が07年11月まで7か月連続トップと絶好調。ソフトバンクだけは「黒ブームってなに?」という感じなのだ。
でもホワイトプランがあるなら、ブラックプランがあってもいい。「ドコモのブラックプラン」のほうが、「ドコモ2.0」よりもインパクトがある気もするし。
そう思ってNTTドコモの広報に「ブラックプランを始める予定はありませんか?」と聞いてみたのだが、
「ブラックプラン? まったくの初耳です。そんな予定はないですね~(笑)」
と一蹴されてしまった。