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あなたも「個紋」作りませんか? 「自分だけの家紋」が大流行

   「私の家紋は栗でした 栗・・・ あんまり冴えない(笑)」
   「なぜにペンギン!? でも、おもしろいから良しとする」
   最近「私の家紋」や「My家紋」と題して始まるブログ記事が大増殖している。発生源は、「綾鷹 上煎茶」の公式サイトに設けられた「KAMONジェネレーター」だ。「自分専用の印がほしい」。そんなニーズの反映なのかもしれない。

試してみたら「ウツボカズラ」だった!

綾鷹のサイトにある「KAMONジェネレーター」が人気だ
綾鷹のサイトにある「KAMONジェネレーター」が人気だ

   「綾鷹 上煎茶」は2007年10月8日に日本コカ・コーラから発売された本格プレミアム緑茶。発売と同時に登場した「KAMONジェネレーター」は、ネット上の「家紋製造機」。自分の生年月日と氏名を入力するだけで、オリジナルの「KAMMON(家紋)」が作り出される。その画像は、デスクトップの壁紙やブログパーツとして無料で利用できる。

   評判を知り、さっそく記者も「My KAMON」を作ってみた。氏名と生年月日を入力すると、3秒後には「ウツボカズラ」と題された紋と次のような"お告げ"が現れた。

【ウツボカズラ】
ウツボカズラ紋のあなた。他の植物に巻きつきながら成長するウツボカズラの様に、周りの人々の協力により大きく成長する方です。その為、人との出会いがあなたの人生を大きく左右してゆきます。ホンの些細な巡り合わせも大切に過ごせば、きっと充実した人生を送れるはずです。

   食虫植物とは、予想もしないデザインだ。 "お告げ"の内容は妙に納得させられて、つい知り合いに教えたくなってしまう。07年に大流行した「脳内メーカー」を試したときと似たような心理状態だ。

   KAMONの紋様は、植物以外に動物や人間の手、さらにはオーロラや雷といった自然現象まである。丸や四角の枠、カラーの組み合わせもいろいろ。何種類あるのか公表されていないが、ブログを見るかぎり、なかなか同じ紋にめぐり合えないことは確かだ。

   11月下旬には2人の情報を入力して作る「ペア編」もスタート。ますます人気の「KAMONジェネレーター」だが、ヒットの理由について、日本コカ・コーラ広報部は、

「(魅力は)自分だけの家紋をカスタムメイド感覚で簡単に作れるところでしょうか。 予想もしないデザインがあるのも人気の秘密かと思います」

と答えてくれた。

カナダ移住の願いを込めて、針葉樹林の「個紋」作る

「KAMONジェネレーター」が作成したウツボカズラの紋
「KAMONジェネレーター」が作成したウツボカズラの紋

   「KAMON」のように"遊び"として楽しむ人がいる一方で、お金を払って自分専用の「個紋」を手に入れる人もいる。有限会社でじまむワーカーズは4年前に個紋作成サービス「うちの個紋」を立ち上げ、個人用の紋を制作してきた。

   デザイナーと相談しながらオーダーメイドするので、完成した紋はどれも個性的だ。名前に「木」がつき「将来カナダへ移住したい」という夢を持つ人は、針葉樹林をテーマにした個紋をオーダーした。飼っている愛猫をモチーフにした人もいる。

   「うちの個紋」の"女将"こと、でじまむワーカーズ代表取締役の寺本哲子さんは

「個人でビジネスや執筆活動をしている方が多いようです。男性と女性の割合が半々なのも、その影響でしょうか。年代も特に決まっていません」

と話す。同社は、個人による情報発信が社会を動かし始めている21世紀の社会では、個人が大勢に認知してもらうための「セルフブランディング」が求められていると分析。そのツールとして家紋に着目したのだという。

   「うちの個紋」の価格は、個人用5万2500円~、法人用10万5000円。この値段ではちょっと高くて手が出しづらい、という人のために、既成の紋を選んでもらうサービス「366日の花個紋」も07年8月から開始した。

   オーダーメイドではないが、選択肢の多さが"自分専用"という印象を与える。こちらは紋をプリントする対象を、水晶印鑑、ワインラベル、シーリングスタンプの3つから選ぶ仕組み。08年春には手ぬぐいと風呂敷も追加される予定だ。

家紋の「進化」は続いていく

「366日の花個紋」で紋を選べる水晶印鑑。価格は1万2000円(送料、加工費、税込)
「366日の花個紋」で紋を選べる水晶印鑑。価格は1万2000円(送料、加工費、税込み)

   家紋は、平安時代の貴族が持ち物に付けた紋様がルーツだといわれる。牛車や装飾品が自分のものであることを証明するために「紋」をつけ、しだいにそれが世襲されるようになったのだ、と。

   その後、家紋は日本だけでなく、海外にも広がった。あの有名なルイ・ヴィトンのモノグラムも、ジャポニズムや万国博覧会にわいた19世紀のパリで、家紋を参考に誕生したという。

   個人が自ら情報を発信する時代、「家紋」あるいは「個紋」は、ファッショナブルな進化を繰り返しながら、身近な表現手段として注目され続けるだろう。