2024年 4月 25日 (木)

ピアノに乗って顕れる 女性の胸の「奥の奥」

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

『姿』
島崎智子/11月19日発売/MDCL-1490  3150円
MIDI Creative


   70年代は、学生運動の余熱が冷めやらぬ、まだまだそれほど豊かでもなく、人々も笑うより考え込む表情の方が多かった時代。音楽は時代を色濃く反映するもので、男どもはかぐや姫を筆頭とする叙情派フォークの一群と共に、高田渡や、友部正人などメッセージ色の強いフォークの一群もまた大勢いた。女性ミュージシャンも、フォーク、ニューミュージックというカテゴリーの中に、さらっとした五輪真弓、谷山浩子、いるか等がいた一方で、中島みゆき、カルメン・マキ、森田童子、山崎ハコなどの強烈な個性をもったミュージシャンも大勢デビューした。

   そうしたミュージシャンがいた一方で、とてつもないローカリズム、とてつもない存在感で他を圧倒したミュージシャンが何人かいた。三上寛、友川かずき等だ。彼等に共通するのは、音楽は誰のものでもない「俺のもの」という強烈な主張だ。「俺が歌って何が悪い」というくらいの自己主張があった。決して上手くない歌とギター……それはどろどろとした怨念のようでもあり、いっそ小気味良かった。

   大阪から生まれた島崎智子の歌を聴いていて、思わず友川かずきを思い出してしまった。似ているというのではなく、圧倒される感覚が同質なのだ。そうだ、音楽というのは、こういうものでもあるんだと、改めて思った。そういう意味では宮古島の下地勇の音もそうだった……。音魂という言葉は存在しないが、存在しても良い。もし彼等の音を敢えて文字にするなら音魂だろうか。

   島崎智子はすでにMINI ALBUMを3枚(05年「mebalance」、06年「Good Luck」、07年「"it"」)発表しているが、こちらも是非聴いてみることをお勧めしたい。21世紀の腐り始めた日本という社会に生きる、女性の胸の奥の奥がピアノの音に乗って顕れてくる。

【姿  収録曲】
1.8-Hit
2.インターネット
3.ポストにポン
4.わからんちん
5.この冬いちばん寒い朝
6.部屋にて
7.嫌われ上手
8.おかしい
9.お邪魔します
10.ちいさいちいさい
11.歩け
12.territory!

加藤普



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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