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年間消費「5億カプセル」 始まったネスプレッソ戦争

   日本でもコーヒー通の間で人気の高い、アルミ・カプセル入りのプレミアム・コーヒー"ネスプレッソ"。フランスでは年間、5億カプセルが消費されており、この人気を見逃す手はない、と競合他社がネスプレッソ専用マシンで使える、カプセル入りコーヒーの販売を開始した。

   フランスで「コーヒー」と言えば、エスプレッソのことを指し、街中のカフェや大衆的なレストランには、たいていカウンターの中に大きなエスプレッソ・マシンが設置してあり、フランス人たちは食後にテーブルで、あるいはカウンターで、エスプレッソを飲む。家庭用の小型エスプレッソ・マシンは味がイマイチ、と言われていたが、スイスのネスレ社が開発した専用マシンを使って、アルミ・カプセル入りのコーヒーを抽出する"ネスプレッソ"は、自宅や事務所で本格的なエスプレッソが味わえる、とフランス国内で年間、5億カプセルが消費される大ヒット商品となった。

人気の秘密は、おいしさとリッチ感

自宅で本格派エスプレッソが楽しめる
自宅で本格派エスプレッソが楽しめる

オペラにあるリッチ感あふれる専門店
オペラにあるリッチ感あふれる専門店

   ネスプレッソがこれだけヒットした理由はまずは、そのおいしさにあるが、それに加えて、ハリウッドの人気俳優ジョージ・クルーニーを起用した宣伝広告の効果、さらにそのリッチ感にあると見た。パリには、シャンゼリゼ、オペラ、サンジェルマンなどの一等地にネスプレッソのマシンとカプセルを販売する専門店があり、入口には高級ホテルのごとくドアボーイが立ち、「ボンジュール、マダム、ムッシュー」とにこやかに客を迎える。店内では、スーツ姿のスタッフが、高級宝飾店並みの、品のいい愛想笑いを浮かべながら、客に応対する。また、このコーヒー・カプセルは専門店もしくは会員になってネスプレッソのHP、あるいは専用ダイヤルを使って注文しないと購入できないしくみだ。この"限定された"販売方法もリッチ感をあおっているだろう。まあ、リッチと言っても、カプセルは10個(10杯分)で3ユーロ(約400円)、専用マシンは一番安いものなら120ユーロ程度の、ささやかな贅沢というレベルであるが。

専門店入口にはドアボーイも

スーパー・マーケットに並ぶ競合製品
スーパー・マーケットに並ぶ競合製品

   さて、この人気を見逃す手はない、と4月に、競合のコーヒー・ブランド"オー・メゾン"が、ネスプレッソ専用マシンで使えるカプセル・コーヒーを発売開始。ただ、ネスプレッソのカプセルは1700もの特許に守られているゆえか、このコピー製品は価格が本家より1個につき5サンチーム(6円程度)安いだけ。まあ、ちりも積もれば山となるし、何よりも、スーパー・マーケットなどで手軽に購入できるのが魅力だ。さらに、フランスの大手スーパーマーケット・チェーン"カジノ・グループ"も同チェーン店で限定販売のネスプレッソ専用マシン対応のコーヒー・カプセルをこの5月から販売すると発表。こちらは、本家よりも価格が20%安く、カプセルにはエコロジーに配慮した生分解性プラスチックを使用することを売りにしている。実は、この製品、元ネスプレッソ社長が創始した新会社が開発したというから、本家としても穏やかではない。

   老舗ブランドが強いか?安さ、手軽さやエコ配慮を売りにする競合が追い上げるか?この戦い、ちょっと興味深い。

江草由香


【プロフィル】
江草由香(えぐさ ゆか)
フリー・編集ライター。96年からパリ在住。ライターとして日本のメディアに寄稿しながら、パリ発日本語フリーペーパー『ビズ』http://www.bisoupfj.comの編集長を務める。著書は芝山由美のペンネームで『夢は待ってくれるー女32才厄年 フランスに渡る』。趣味は映画観賞。