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役割分担なく親も子も「フラット」な関係 「イマドキ家族研究所」1万人に家族調査

   時代と共に社会や経済が変化し、それに伴って生活共同体としての「家族」はどう変わってきたか――。現代の家族の価値観や、理想とする家族像について調査、研究するユニークな団体が現れた。

   2010年9月30日、「イマドキ家族研究所」は都内で発足セミナーを開催し、事前に実施した1万人を対象にする家族調査の結果を公表した。同研究所は、コラムニストで「草食男子」の名付け親、深澤真紀氏が代表に就任。社会学や幼児教育、ライフスタイル研究の専門家らが研究員として名を連ねる。

父親の「育児をやろう」で母の信頼増す

「イマドキ家族」について語る深澤真紀氏
「イマドキ家族」について語る深澤真紀氏

   発足会では、1万人調査から浮き彫りとなった20、30代の「イマドキ家族」の特徴を紹介。キーワードとして「フラット」「ポジティブ」「コンパクト」を挙げた。

   「フラット」とは、家族間で「役割」を決めつけずに、できる人がやるというスタンスを指す。若い世代の夫婦ほど、夫婦平等でものごとを決める傾向にあり、父親が積極的に育児に参加する割合が高い。育児に「かなり積極的に参加(してきた)」と答えた60代は13.9%だが、20代では30.2%と倍以上だ。深澤氏はこれについて、「たとえ完璧でなくても、夫が『育児をやろう』と一生懸命取り組むのがイマドキ家族。これで奥さんも信頼感が増すのです」と説明する。実際に調査結果を見ると、父親の育児参加に対する母親の満足度は、「とても満足」「ほぼ満足」を合わせると20代で60.8%と世代間で最も高い。

   「ポジティブ」は、「家族でいつも楽しく過ごそう」という姿勢。若い世代ほど結婚記念日や父母、子どもの誕生日を家族一緒に楽しむ人が多い。深澤氏によると、子どもの誕生日に休む若い人が増えているそうだ。そして「コンパクト」とは、家族旅行よりは近所のショッピングモールに出かけたり、外食を楽しんだりといった自分たちの生活圏で日常的な楽しみを追求するスタイルを意味している。

   深澤氏は、家族の「象徴的」な変化として、理想の父親像を挙げる。40代以降の男性は、父親に「厳しさ」「リーダーシップ」を求めるが、20代、30代は「尊敬」がキーワードとなる。これは、「オレの背中を見ろ」というのではなく、話を聞いてくれたり、自分に向き合ってくれたりすることを父に求めるようになったのだという。

「イマドキ」世代は親の世代「反面教師」か

20代の父親は育児に積極的
20代の父親は育児に積極的

   イマドキ家族と、50、60代の「昭和の家族」では、なぜこのような違いが出たのか、セミナーの終了後、深澤氏はJ-CASTニュースの取材に対して、「若い世代は、意識的に自分の親の世代と違う家族像を得ようとしている」と話した。「強い父親」を理想とする50、60代は、家の主導権は父が握り、テレビも父が独占、育児や家事にも母任せ――。そんな父親を子どもとして見てきた世代が「反面教師」にしているのではと分析する。

   果たして「イマドキ家族」で育った子は将来、どのようなマインドを持って家族形成するのだろうか。深澤氏は、社会や経済事情が不安定な半面、両親は自分を肯定してくれることで「ゆるぎない両親への強い信頼感がある」と考える。そのうえで、両親から受け継いだ家族のあり方、価値観といった「家風」を、次の世代にも伝えていくのではないか、と語った。