2024年 4月 19日 (金)

孫正義と山中伸弥、五神真、羽生善治から若者へ 「考え、興奮し、人と分かち合え」

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   ソフトバンクの孫正義・代表取締役社長が2016年12月に設立した一般財団法人「孫正義育英財団」が17年2月10日、対談イベント「未来を創る若者たちへ」を開催した。

   「孫正義育英財団」の目的は、「未来を創る人材の支援 『高い志』と『異能』を持った若者に自らの才能を開花できる環境を提供し、人類の未来に貢献する」。財団の孫代表理事と副代表理事の山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長、理事の五神真・東京大学総長、評議員の羽生善治棋士が、25歳以下の若者や教育関係者約1500人で埋め尽くされた会場内で対談した。

  • ソフトバンクの孫正義・代表取締役社長(2017年2月10日撮影)
    ソフトバンクの孫正義・代表取締役社長(2017年2月10日撮影)
  • 山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長(2017年2月10日撮影)
    山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長(2017年2月10日撮影)
  • 東京大学の五神真総長(2017年2月10日撮影)
    東京大学の五神真総長(2017年2月10日撮影)
  • 将棋の羽生善治三冠(2017年2月10日撮影)
    将棋の羽生善治三冠(2017年2月10日撮影)
  • ソフトバンクの孫正義・代表取締役社長(2017年2月10日撮影)
  • 山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長(2017年2月10日撮影)
  • 東京大学の五神真総長(2017年2月10日撮影)
  • 将棋の羽生善治三冠(2017年2月10日撮影)

何の山に登るのか

「登る山を決めることによって、人生の半分が決まる。人生って長い山登りみたいなもの。一回登り始めたら、なかなか途中で変えにくい。自分の情熱を何に使うかによって、半分人生、決まってしまう」

   孫氏はそう語り、山中氏と五神氏、羽生氏に「いつ、どうして登る山を決めたのか」を質問した。

   山中氏は「大学院で初めてやった実験が、その後の運命を決めた。簡単な実験だったが、結果は予想と正反対。それを見てがっかりするなら良かったけれど、僕は物凄く興奮した。自分でも予想しない反応だった。その瞬間に『自分は研究者に向いている』と」と明かした。

   小学校1年で将棋と出会い、5年で入った日本将棋連盟の養成機関で腕を磨き、中学生プロとなったのが、羽生氏だ。夜遅くの対局を終え、朝方に帰路に就くと、通勤、通学中の人たちは反対方向へ歩いた。羽生氏は「『完全に道を踏み外した』感覚があった」と述べ、会場内は笑いの渦に。「他の人と違う山に登り始めたことを痛感した瞬間だった」という。

   幼少期は粘土細工などに熱中し、中高時代に技術者の父の影響で物理学の道に進んだ五神氏は、大学時代に「理学として真理の探究をすることと、人々の役に立つことと、どっちが大事か」で悩んだという。東大の教授陣に相談すると、返ってきた答えは「心配しなくていい。本当に新しいことだったら、必ず役に立つ」。五神氏は「私はまだ、山が本当に見えているかどうか分からない」とし、若者たちを学問の世界に誘った。

「100年後200年後の人々にまで...」

   山中氏の原点となった実験の話には、続きがある。「最初の実験で、予想を立てたのは僕でなく、先生だった。先生の言ったことが真逆だったのだが、ラッキーなことに、その先生がすばらしい人だった。自分の結果が、正反対。普通なら怒り出してもおかしくないが、その先生は僕と一緒に興奮してくれた」。

   学問の研究に失敗は付き物だ。「実験の成功率は、平均だと1割以下」と、山中氏は言う。「失敗の時にエンカレッジしてくれる人。そして、成功した時に一緒に喜んでくれる先生。これがないと、研究というのは...」と語り、五神氏に賛同を求めた。

   五神氏は修士1年の時、行き詰った実験があったが、無関係の教授の講義をきっかけに、成功した体験がある。「物凄く興奮して結局、そのテーマで博士を取った。今から思うと、完全なビギナーズラック。だけどそれにたまたま出会ったことと、自分自身で思い付いたという興奮がなければ、多分ここにこうしていなかったと思う」

   孫氏は「興奮することは物凄く大事なことだと思うし、分かち合う人がいて、うれしくなる」と語り、客席の若者たちに

「皆さんが一番快感を感じるのは、自分自身の身近なものというよりは、もっと多くの、世界中の人々、100年後200年後の人々にまで、感謝され、喜んでもらう。そのときだということを覚えてもらいたい」

と熱弁した。

AIが残り11の脅威を解決する

   山中氏は、五神氏の発言を引き合いに「何でも新しいことだったら、時間はかかっても役に立つ、と信じている」と強調する。だが問題は、「どうやって新しいことをやるか」だ。

   山中氏は「こんなに情報がいっぱいあると、なかなか新しいことが残っていない」と言い、4つの手法を提案した。①本質的には何もないところから生み出す(ひらめき)、②全然違う2つのものを結び付ける、③世の中のために必要だが難しく、誰も手を出さなかったことに挑戦する、④神頼みで食らい付く。

   孫氏は「せっかく優れた知恵があっても、普通の人と同じように、ただ何となく人生を過ごしてしまうと、本当にもったいない。やっぱり強烈に考える、と。既にあるものを繰り返すのは、コンピューターに絶対負ける。過去にないものを創り出す時に、まだチャンスがある。そのためには、考えるということですよね」と語り掛けた。

   そして、話題は「世界の未来について」へ。山中氏が「今の急速な技術の進歩が人類を滅ぼすかもしれない。ここにいる人たちが、どう使うかによって変わると思う」と語り、羽生氏はAI(人工知能)と共存する未来を展望し、1つの視座を提供した。オックスフォード大の研究所が発表した報告書「人類が抱える12のリスク」では、パンデミックや気候変動に交じり、AIもその1つだという。

「私、1つ思ったんです。気候変動はリスクしかない。ただAIには、その技術が物凄く進んだ時、残り11の脅威をもしかしたら全部解決してくれるかもしれないポテンシャルがある」

   孫氏は「すばらしいお話を聞いた。僕も同感です」と絶賛した。

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