2024年 4月 25日 (木)

「ドッグ・バイト・ドッグ」
凄まじい「ヴァイオレンス・シーン」が次々と展開

   「インファナル・アフェア」以来、香港映画は蘇生し始めた。先頃佳作「傷だらけの男たち」を紹介した。小品だがこの「ドッグ・バイト・ドッグ」(狂犬が狂犬を噛む)も凄い。フィルム・ノワールの画面に凄まじいまでのヴァイオレンス・シーンが息つく暇も与えず、次から次へと展開される。

(C)2006 Art Port Inc.,ALL RIGHTS RESERVED
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   主人公はカンボジア人の殺し屋パン(エディソン・チャン)。孤児だったパンは子供の頃から闘犬のように育てられた。死ぬまで続く子供同士の死闘。見物人がその勝負に金を賭ける闇の世界。ボスは殺人請け負いを商売としており、成人したパンは殺し屋として香港へ行く。

   アメリカの殺し屋みたいに格好は良くない。汚いボロ貨物船の船底に潜み残飯を食べながら香港に着き、指令どおりに前金を受け取り、中華料理屋へ行く。中国語を喋れない、読めない、書けないパンはメニューの写真に沢山マルをつけて注文。その多さに驚くが、瞬く間に手から口へ運び込む。やがて殺人ターゲットの女性の登場。テーブルに近づくパンは至近距離から数発、テーブルに伏した頭に銃口を押し付けて数発。目撃者を気にしない、徹底的な殺しだ。

   この殺人犯を追う香港警察。若いワイ刑事(サム・リー)は不遜で主任の刑事にも不服従の態度。何か問題を抱えているように見える。目撃者への尋問も殴る蹴るの荒っぽさ。

   こうして2匹の狂犬同士の追跡劇からショウダウン(対決)と激しい暴力場面が展開する。だがパンは自分と境遇の似ている少女(ペイ・ペイ)に出会い愛するようになり、逃避行でも彼女への気配りが優先する。狂犬同士の対決に割って入る少女の「和」の役割は重要だ。

   パンを演じるのはエディソン・チャン。日本語も喋れるので「呪恩 パンデミック」でもネイティブに近い日本語のセリフをこなしている。「インファナル・アフェア」や「頭文字D」などでは温厚な役だが、彼のイメージを変える狂犬役を見事に演じる。過去の悩みを内苞し暴れまわる刑事ワイにサム・リー。日本映画「ピンポン」でもチャイナ役で出演した。エディソンとは「ジェネックス・コップ2」で共演している。監督ソイ・チェンは香港ホラーの名手。「愛・作戦」は東京国際映画祭で上映されている。

   大抵のヴァイオレンスには驚かないが、逃げるために取った人質をピストルやナイフで次々と殺すパンの非情さ、目撃者を傷つけ、同僚の刑事にも銃を向け発砲もためらわないワイ刑事の残酷さには衝撃を受けた。この倫理観が完全に欠如した二人の主人公は今までの映画には見られないヴィレイン(悪漢)たちだ。

恵介
★★★☆☆
ドッグ・バイト・ドッグ (DOG BITE DOG)
2006年香港映画、アートポート配給、1時間48分、2007年8月11日公開
監督:ソイ・チェン
出演:エデイソン・チャン / サム・リー
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