監督・脚本のクエンティン・タランティーノはB級映画の王者だ。「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」「キル・ビル」などどれを見てもヴィスコンティやベルイマンのような哲学的意味を微塵も含んでいない。ひたすらセックスとアクションとドバーっと流れる真っ赤な血に満ちている。そんな残虐シーンを独特なユーモアで味付けして観客にサービスする。

タランティーノが盟友ロバート・ロドリゲス監督と組んで2本立て作品を送り出した。アメリカでは2本立てで3時間と少々の長さ。90分を越すB級作品は無い。但し日本では一本ずつ分けて上映される。最初がタランティーノの「デス・プルーフ in グラインドハウス」。
グラインドハウスとは60~70年代のB級映画を2~4本上映する映画館のこと。大麻を吸う甘酸っぱい臭いが漂い、コークで床はネバネバ、あちこちにイビキをかいているオジさんたち。今は無いそんな小屋を懐かしんで映画を2本作った。だからフィルムは使いまわしの古さを出すため傷つけて"雨"が降り、映画のコマがズレ、ありもしない映画の予告編が入り(なんとニコラス・ケイジが主演!)、近くのダイナーの割引きの広告が挿入される。手が込んでいる。
"デス・プルーフ"とはどんなに衝突しても引っくり返ってもドライバーが"死なない"装置を備えた車のこと。その車を駆って次々と衝突しては殺人を楽しむスタントマンのマイク(カート・ラッセル)。獲物はテキサスのラジオDJ、ジュリアたち仲良し4人組み。バーやチリ料理の店をハシゴする彼女たちを、マイクはドクロを付けたシボレーでつけ回す。それから14か月後、映画関係の4人の女性、キム、ゾーイ、アバナシーとリーは、売りに出ている70年型ダッジ・チャレンジャーに試乗しようということになる。今度は彼女たちにマイクが目をつけて……。
「パルプ・フィクション」冒頭でマクドナルド・ハンバーガーについての論議があったように、女たちの音楽や映画についてのカルト的でどうでも良い会話が延々と続く。新しい獲物を狙うマイクはダッジ・チャレンジャーを追う。この車こそ映画「ヴァニシング・ポイント」で主役になった名車だ。そして乗っているのはマイク同様にスタントを職業にしているゾーイ。彼女のスタントは並みじゃない。ゾーイは実名で「キル・ビル」のユマ・サーマンのスタントを務めたプロ。映画界に入って以来、初めての女優業となった。
車同士ぶっつけ合いながらのカーチェイスと衝突炎上、爆発シーンの凄さ。どうやって撮影しているのだろう。少なくともCGではなく実写だ。登場する女性陣はそそる女優ばかり、車での連続殺人、流れる血と、何も考える必要の無いB級映画は楽しい。
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