当欄執筆担当の「黄蘭」が、この9か月で初めて、次回の「第2部」と共に3ッ星を出す。これは単にドラマの出来だけの評価ではない。行数がないので省略するが、作り手の志と熱意、安易にCGを使わぬアナログ的作風、役者を動かす演出家の迫力と洞察力などに対する総合評価である。汗が画面から飛び散るような作品だ。
自身でも優れた画家である榎木孝明を、かの有名な『帝銀事件』の容疑者・平沢貞通に配したセンス。高名なテンペラ画家だが嘘つきでもあった平沢の、結局は処刑されずに医療刑務所で逝った事実を、日本人ならみな釈然としない思いで思い出す。この難事件にも、若き八兵衛が名刺班で関わっていたとは知らなかった。
そごうデパートの倉庫係が殺された『ガードマン殺人事件』については、犯人森川の妻・八重子になる余貴美子が素晴らしい。夫を心の中では疑いながら、地方から出てきた寂しい境遇で、簡単には夫を刑事に売り渡せないおどおどとした底辺の女を見事に描き出す。女といえば、静かに凛として夫を支える妻・平塚つね(原田美枝子)、平沢のアリバイに関係する長女・咲子(木村多江)らが、それぞれ男女雇用機会均等法など影も形も無かった昭和の、自己主張を抑制されていた控えめな姿としてリアリティをもって描かれている。
この作品が平塚八兵衛を演じる渡辺謙の代表作になるのは間違いない。勿論、石橋冠監督の名演出も語り継がれるだろう。
(黄蘭)

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