認知症男性が子守始めた! 共生型介護の希望と壁
<テレビウォッチ>介護の必要なお年寄りや障害者、保育所が足りず待機組の児童たちがひとつ屋根の下で互いに支え合う『共生型介護施設』が今、注目を集めている。
もとは、不足する施設を補完する役割から始まったが、瓢箪からコマが出たようだ。
縦割り行政の弊害
お年寄りが子どもや障害者を支えるのに一役買うなど、それぞれが役割を自分で見つけ、失いかけていた力を回復し表情までが生きいきと蘇るケースがあちこちで報告されているという。
ただ、縦割り行政の高いカベに阻まれて現在は、13道県、591軒(2008年)にとどまっている。
番組では共生型介護の実態を紹介しながら、新しいタイプの介護にどのような可能性が秘められているのか、どんな課題を抱えているのかを探った。
まず番組が映しだしたのは、全国でいち早く『共生型介護』に取り組んできたという富山県にあるデイケアハウス『にぎやか』。
ここではお年寄りのほか障害者や子どもたちも受け入れ、毎日15~16人が一緒に過ごしている。お年寄りの半数以上が認知症で、その他の人もケアなしでは生活できない。
ところが、ひとつ屋根の下で一緒に過ごし始めると意外な反応が出てきた。84歳の認知症の男性と母親の病気で預けられている3歳の男児との交流だ。
独りでいるときの男性は、他の人と話すこともなくただ黙って座ったまま。1人では立ちあがることもしない。
ところが、男児が呼びにくると「ハイ、ハイ、ハイ、よいしょ」と言って1人で立ち上がり、今では孫とおじいちゃんの関係に。
施設の阪井由佳子代表は「お年寄りは子どもからエネルギーをもらい、子どもはお年寄りから温かさとか思いやりとか安心をもらっているわ」という。
札幌市にあるお年寄りや障害者たちが暮らす共同住宅『タウン白楊』。食事に準備や見守りは常駐している2人のスタッフが行うが、お年寄りや障害者もできることは助け合う。
その中の1人、自宅で転倒した際、頭に深い傷を負って高次脳機能障害と診断された56歳の男性。感情のコントロールがうまくできず、急に怒り出すので家庭生活ができず入居した。
ところが、お年寄りや障害者から頼りにされているうちに症状がほとんど消え、今ではゴミ出しや食事の配膳係り率先して引き受けている。