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ギリギリの山岳救助 「想像力」が必要なワケ

<テレビウォッチ> 富山県に住んでいると、すぐそこに立山連峰を感じることができる。天気の良い日には恐ろしいほど峰々がくっきりと見える。富山県出身の私はそれを見ながら自転車にまたがり、高校まで通っていた。その立山連峰の中に、ひときわ登山者を魅了する山がある。標高2999メートル、剣岳だ。

剣岳と富山県警山岳警備隊

   私は、剣岳はとても恐ろしい山だと聞いて育った。映画『劒岳 点の記』を観ても、この山が持つ恐ろしさをうかがい知ることができる。そして実際、遭難のニュースもよく耳にする。そのニュースで必ず耳にするのが「富山県警山岳警備隊」。遭難者を救助するスペシャリスト集団である。今回のプロフェッショナルはその現場リーダー・山田智敏。

   剣岳はただでさえ危険度の高い山である。そこから遭難者を救出するためには、登山テクニック・体力・搬送技術ともにトップクラスの腕が必要である。その現場に30歳で配属、39歳にして「韋駄天」の異名を持つ山田。その彼は、救助に必要なのは「想像力」だと語る。

「山の中って危険な場所ですよね。遭難者がどういう状態にあって、どうやって救助すればいちばん早くて安全か、というのを考えながら行かないと。想像力や創造力。イマジネーション」

「まだまだ知らないところが」

   登山ルートは地図に載るような登山道だけではない。雪渓の状態は常に変化する。さまざまな条件から進むべき最善の道を選び、救出に向かう。配属されて10年。毎日のように山と向き合い、感性を研ぎすませてきた。彼の「想像」は経験に裏打ちされた、山で磨かれた彼の感性から生まれる。

   「(山は)なかなかすべてを見せてくれることはないので、まだまだ自分の知らないところがたくさんあると思います」。

   自然は人間の想像を超えた荒々しさを見せつけるときがある。荒々しさにしっかりと耳を傾ける事が、警備隊の仕事なのかもしれない。

慶応大学・がくちゃん

NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2010年3月2日放送)