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黒字は4空港だけ。収支も人件費も公表しない自治体運営空港のデタラメ

   採算を度外視して続々と開港されてきた地方空港。実態を伏せたまま運営してきた自治体もいま、ようやく危機的状況下にあることを分かり始めたようだ。赤字体質が定着し、なかには廃港を覚悟せざるを得ない空港も出現しているという。

   NHKの調査では、自治体運営の55空港のうち51もの空港が赤字という結果が出た。明るみになった地方空港の危機。番組でその実態を追ったところ、臭い物には蓋という隠ぺい体質に行き当たった。

年間収入5600万円に経費4億3000万円

   NHK が調査したのは、着陸料などの収入、人件費など11項目。それによると、全国98ある空港のうち、自治体が運営しているのは55空港で、黒字空港は旭川、冨山、神戸、石垣の4空港だけ。あとはみな赤字で総額は80億円にのぼるという。赤字空港のなかには、空港運営に関わる人件費すら分別できないと回答する自治体もあったという。

   赤字空港がなぜこれほどまでに膨らんだのか。覆い隠されて分からなかった経営の実態を積極的に公表した自治体がある。秋田空港と大館能代空港を持つ秋田県だ。公表の理由を佐竹知事は「逆にいえば、今まで公表されなかったのがおかしい。このまま突っ走れば必ずムリが来る」からと言う。4月末に開かれた県議会で初めて収支状況を明かしたが、2つの空港合わせた年間赤字額6億9000万円という報告に、県議たちは驚きの声を上げたという。

   問題は大館能代空港で、就航しているのは東京便が2便、大阪便が1便の1日3便しかない。昨年度の利用客は過去最低の11万人。人件費など年間支出が4億3000万円に対して、収入はわずか8分の1の5600万円しかなかった。

   原因は過大な需要予測。開港前の98年に行った予測では、18便が就航し72万人が利用すると見込んでいた。しかし、開港前年に秋田新幹線が開通し、続けて大館能代空港から規模の大きい秋田空港につながる高速道路も開通。どんどん利用客が落ち込んだ。

バッシング恐れて赤字ウヤムヤ

   番組は「国や県が地域の交通機関の将来戦略を考えずに、タテ割りで整備してきた結果だ」と指摘する。問題はこれだけで済まなくなってきた。経営再建を目指す日本航空が国内30の不採算路線のリストラを発表したことから、主要収入源の定期路線を失う空港すら出てきた。

   さらに追い打ちをかけるように、国交省が「地方空港に手厚く資金を配分してきた特別会計の仕組みがムダを生んできた」として、今後は主要空港に資金を集中させる計画を打ち出した。年間50億円規模の地方空港への補助金が減額される可能性が高まってきたのだ。

   秋田県だけの問題ではなく赤字空港を抱える自治体は、赤字を覆い隠しながら、税金を注ぎ込むことはもはや不可能な時代になってきている。

   それにしても、自治体は地方空港の収支報告をなぜ公にしてこなかったのか。国谷キャスターの「(住民が)情報なきままに判断させられてきたことがすごく問題ですね」に、番組に出演した関西学院大学の上村敏之教授は次のように指摘した。

「公にするとほとんどの場合、赤字なのでバッシングを受ける。それが嫌で積極的に公にしなかった。今後は、赤字をどうやってコントロールするかが大事で、住民に情報公開し、緊張を持って運営する体制を整えていくことも必要だ。
   もう一つは空港を担当する職員はいろんな分野にかかわっていて、空港業務の人件費を集約するのがすごく難しい。国も地方空港の収支状況とか財務状況を積極的に把握しようとしてこなかったのも問題だ。
   効率的な空港にできるかどうかはコストを意識させることにあるが、そのチェックができない。これからは他空港と比較できるように、経理のフォーマットを決め、一定の書式のもとで収支の計算ができるような制度にすることが必要だ」

   空港は1例に過ぎない。他にも情報を非公開にしたまま、税金を湯水のごとく公共的なインフラに注ぎ込んできたケースは多いという。

*NHKクローズアップ現代(2010年5月26日放送「地方空港明らかになる『危機』」

モンブラン