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どこまで広がるかわからなくなってきた「原発被害救済」

   東京電力福島第一原子力発電所の事故による被災者の救済が遅々として進まない。被災者は約8万人と膨大で、避難先は東北から関東、関西など全国に及んでいる。国谷裕子キャスターは「事故による被害者救済は原子力損害賠償法に基づいて行われることになっています。しかし賠償の時期や範囲、金額、また情報提供を誰が行うかなどは具体的に決められていません」と国や自治体による救済の現状を伝えた。

県外避難で自治体も実態把握できず

「現在、原子力賠償紛争審査会が賠償に向けた『指針作り』を進めていますが、全国に避難した被害者には情報が行き渡らず、また賠償の遅れから経営が追い詰められている漁業関係者や農家も増えています」(国谷)

   大阪に避難した被災者はこう話す。

「東電からは一時金はもらったが、新生活のための調理器具や家具などを購入したために数日で消えてしまった。もう、手元にはほとんど残っていない」

   福島県・浪江町では約4割の町民が県外に避難しているが、行政も十分な連絡をとれない。ホットスポットでも自主的避難者が増えているが、彼らへの賠償の見通しは立っていない。

ハッキリしない政府援助

   ゲストの中所克博(元JCO東海村事故・原子力損害調査研究会委員、弁護士)は「現在、東電に対して約600億円の損害賠償請求が出されています。しかし、この金額は氷山の一角。今回の事故で避難を余儀なくされた人は8万人以上になるわけですから、実際はこの2倍、3倍、それ以上にもなるでしょう。そうなると、いかに巨大企業とはいえ、民間企業が自力で払える問題ではなくなる。政府が援助をすると言ってはいるが、その援助がどの程度のものか見えていない。そのために、賠償金の支払いに二の足を踏んでいるのです」と解説した。

   国谷「賠償金の支払いの範囲はどこまでになっているのですか」

   中所「その範囲が明確になっていない。政府の救済策でも明らかではありません。だから、救済への対応がますます遅れているわけです」

   7月14日(2011年)に新たに福島県の畜産農家から放射性セシウムに汚染された肉牛が出荷されていたことが明らかになり、原発被害はいまも広がっていて、収束のメドは立たない。

NHKクローズアップ現代(2011年7月14日放送「『原発被害者』進まぬ救済」)

ナオジン