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家族失った被災者の「グリーフ(悲しみ)ケア」…4か月後の今がつらい

   震災から4か月以上経っても、 家や職、家族を失った痛手は深い。心の傷の癒えない人は大勢いる。しかし、それを口にする機会がない。相手がいない。

   南三陸町のホテルでマッサージをするセラピストの松田さと子さんは、「心のケアというと誰も来ない。だから、アロマとかメイクといって話も聞く」という。マッサージを受けながらだと、みな話をする。愚痴もこぼす。

お酒飲んで錯乱してしまって…

   仙台市内ではグリーフケアという試みが行われていた。家族を失った人同士が悲しみ(グリーフ)を語り合い、苦しみを解きほぐそうというものだ。仙台青葉学院短大の高橋聡美・講師が進行役をつとめる。発言する人がぬいぐるみを持つ。他の人は黙って聞く。これがルールだ。

   竹澤守雅さん(43)と妻 さおりさん(35)は「8か月の息子と義理の父、母、祖母を亡くしました」という。息子の雅人ちゃんはいまも行方不明だ。2人は共働き、息子を両親にあずけて仕事に出ていて、家を流された。

「4か月経ったが、いまの方がつらい。息子の慰霊祭に行くのってありえない。けど行かないといけない」「時間が経つほど人に会いたくなくなったり、凄く後ろ向きになった」

   高橋匡美さん(45)は「父と母を亡くしました」という。「壊れた家の中で母親を見つけた。父は遺体安置所の遺体の写真の中から見つけ出しました」

   傍らで涙を流す女性(仮名)もまた、両親を亡くしていた。「結婚前まで暮らしていた町が壊滅状態で」

   高橋講師「時間が経つと、整理がついたでしょうとかいわれるけど…」

   竹澤さおりさん「葬儀をしたからって区切りがつくわけではない」

   高橋匡美さん「お酒を飲んでしまって、台所で倒れて…。息子と主人が起きてきて、『一緒にばあば死んだの見つけたでしょ。水筒で髪の泥を洗ってあげたでしょ』『もう死んだんだよ』『死んでいない。いま行けば間に合うから行かせて』って錯乱して」

   女性「急にワーッて叫びたくなるときがあって、なんでお父さん、お母さんいないんだろうって。実家もないし、田んぼも畑も全部なくて…」

「1人じゃないなんてテレビ、いまいましい」

   高橋匡美さん「今の心の中は怒りなんですね。八つ当たりかもしれませんが、いまどんな広告やテレビ、パンフとか見ても、『ご冥福をお祈りします』と決まり文句が入っている。心から思ってくださっているんでしょうけど、いまいましく感じます。

   テレビでよく『あなたは1人じゃない』っていいますね、見るたびに、じゃあなんで私は1人でここで苦しんでるんだろうって」

   竹澤さおりさん「テレビでも何か月の節目とかいうが、なんか焦らされているような。だからなんだみたいな。私たちの気持ちは置いていかれてる」

   竹澤守雅さん「地震どうでしたと聞かれると、『息子亡くしました』と応えるのが嫌で嫌で。買い物に行ってたところや散髪にも行けなくなった」

   竹澤さおりさん「同じ立場の人から声をかけてもらうのはわかるけど、そうじゃない人からの気遣いは、素直に受け入れられない自分がいる。すごく性格が悪くなったような気がして疲れる」

   取材した森本さやかアナは「同じ被災者でも、家をなくした人、肉親を亡くした人では違う。まして被災しなかった人だと、親友であってもなかなか本音で話せない。だからグリーフケアが必要なんです」と伝える。

   司会の小倉智昭「前からあったもの?」

   伊藤隼也(医療ジャーナリスト)「アメリカでは医療保険のなかに入っているが、日本では組織化されていない。被災地にも『心のケア』という張り紙はあるが、それではすまない。自立の道を開く必要がある。いまは臨床心理士、看護師、精神科医などがやっているが、組織化は国民的な課題だと思う」

   グリーフケア「分かち合いの会」は、毎月第3土曜日に開いている。詳しくは「仙台グリーフケア」で。