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温家宝首相「事故現場訪問」させたSNS「新浪微博(シナ・ウェイボー)」

   中国の温家宝首相が28日(2011年7月)、 高速鉄道事故の現場を訪れ「調査で背後に腐敗問題が発覚したら、関与したものは処分する。手を緩めることはない」と語った。政府の危機感の表れともみえる。

   珍しく海外メディアも入れた会見で、政治的なアピールは明らかだが、責任追及にも言及したことで、幕引きもにらんでいる感がある。しかし、これまでとは大いに違う。何があったのか。

加入者1億4000万人、1日の書き込み6000万件

   「とくダネ!」はこれまでに伝えられた中国国内の手抜き工事の実例を並べた。

☆ 2008年の四川大地震では、小学校が倒壊して大勢の子どもが死んだ。手抜き工事がいわれたが、政府は否定、報道も禁じて、結局うやむや。
☆ 09年12月に改修が終わった上海の蘇州河大橋に亀裂。調べたら、橋脚の中にゴミが詰まっていた。市当局は構造の安全性に問題なしでおわり。
☆ この6月30日に開通した青島海湾大橋(全長36キロ)で、1週間でガードレールの落下、ボルトの抜け落ちなど。業者は「時間がなかった」
☆6月に上海で、完成間近の高層マンションが1棟丸ごと横倒し。市は 「設計や資材に問題なし」でそれっきり。

   まだまだある。道路の真ん中が陥没した。6階建てのマンションの半分が突然崩れた。 風速20メートルで折れたテレビ塔。日本では考えられないことが次々に起るが、当局が非難されることはなかった。

 

   今回の鉄道事故は違う。政府は報道機関に圧力をかけたが、メディアは激しく政府の責任を追及した。背後にツイッターのようなSNSがあって、これで国民が盛んに発信している。メディアもこれを無視できなくなったのだという。

   SNSは「新浪微博(シナ・ウェイボー)」といって、09年8月にスタート。加入者が1億4000万人(日本の人口より多いぞ)、1日の書き込みが6000万件というものすごさ。ここに政府批判が殺到したが、数が多過ぎて当局も削除できない。

異例の「責任者処罰」まで言及した中国政府

   拓殖大の石平・客員教授は「新聞もテレビも市場経済に組み込まれたから、読者・ 視聴者を無視できなくなっている」という。市民がメディアを動かし、メディアが政府を動かしたということだ。

「政府もこれまでのやり方ではできないということ」

   事故原因についても、鉄道省は人為的ミスを認めた。これまでなかったことだ。 「信号施設に設計ミスがあった」「赤になるはずが青になった」「監視者が誤作動に気づかなかった」「警報音も鳴らなかった」

   司会の小倉智昭「上海のビルには驚いた。構造や材質に問題がないって、なければ倒れないだろう」

   石「背後に腐敗汚職がある。温首相も今回の事故で事実上それを認めた」

   小倉「その責任が上までいくかどうか」

   石「発表は怪しいですね。鉄道省が先手を打った感じがある。信号機を事故原因にしてしまえば、鉄道省の傷は浅い。本当の原因究明になるのかどうか」

   小倉「温首相が現場へいくという意味は大きい?」

   石「国民的な人気があるから事態収拾に欠かせない。それまでは反政府的だった遺族が多少おさまって、横断幕も『温総理お願いします。われわれのためにがんばってください』となった」

   深澤真紀(コラムニスト)「第2の天安門はあるのか」

   石「ひとつのことではジャスミン革命は起らないだろうが、いろんなことが積み重なると爆発する可能性はないわけではない」

   その日は必ず来るだろうが、いつになるのか。