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「福島の橋桁持って来るな」今度は大阪―年間被曝以下でも工事中断

   まだやってる。放射能風評。今度は大阪・河内長野市の橋のお話だ。福島で作った橋桁が心配だという。8月の京都・五山の送り火、9月の愛知の花火と福岡の物産展……。「バカバカしい」とだれも言い切れないバカバカしさ。

橋下知事どこか他人事「データを明らかに」

   河内長野市内の国道とバイパスをつなぐ橋の建設工事を2009年に福島・郡山市の業者が1億2500万円で請け負った。橋桁は震災前の2月に郡山市で完成し、9月に搬入を終え、取り付け工事にかかるはずだった。

   ところが、大阪府富田林土木事務所が7月に開いた住民説明会で、30人ほど出席した住民の一部から「放射能が心配だ」という声が出た。「検査結果で安全安心の確認ができるまでは持ち込んでは困る」というお決まりの騒ぎだ。土木事務所が8月に測定した結果は「0.08マイクロシーベルト/h」 だった。これは福島で年間被ばくの目安となっている0.11マイクロシーベルト/hより低いが、建設資材の基準というものはない。事務所は「判定できない」と工事は中断したままだ。

   日大の野口邦和講師(放射線防護学)は「1ミリシーベルト/年を超えていないから法令違反でもなんでもない」と言いながら、「除染しないで橋桁の横を通れば、多少は被ばくするかもしれないが」と余計なことを言い、さらに「被ばくとしては問題にならない」という。こんな言い方をされたら、かえって心配になる。科学的には正しいにしても、専門家はいつもこうだ。困ったものだ。

   とにかく事務所は「専門家の意見を聞いてから」。橋下知事も「理由のない風評被害にならないように、データを明らかに」と言うばかりだ。数値は出てるのに、基準がない。事務所は「住民の理解を得て」という。

   この問題はきのう6日(2011年10月)の衆院災害復興委でも質問が出た。野田首相は「科学的知見に基づいて対処する。風評被害は多いと思われるので、周知徹底を心がける」と答えた。

建築資材には放射能基準なし

   現地へ行ってきた取材キャスターの奥平邦彦が「住民には便利になる橋だが、子どもも通るし、住民もまさかこんなことになるとはと言っていた。どこでも起こりうること」と話す。それじゃ一億総風評だ。住民の言うことを黙って「はい、はい」と聞いて来ただけらしい。

   司会のみのもんた「基準はないんですか」

   奥平「がれきなんかにはあるんですが」

   与良正男(毎日新聞論説委員)「不安があるうちは動けないというに尽きる」

   吉越浩一郎(ビジネスコンサルタント)は「基準を出さないと」と、これもお決まりだ。「数値を」というのは、 文句を言う住民と同じ目線にあるということだ。

   橋桁の数値は「大丈夫ですよ」というレベル。福島の人たちはその汚染の中で生きている。逃げ場もない。現実に対する思いやりがない。もし立場が入れ替わったとき、どんな思いがするか、そうした想像力もない。高濃度汚染ならいざ知らず、日本に住む以上、一蓮托生ではないか。「心配しても始まりませんよ」とはっきりいえるヤツはいないのか。