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「長崎ストーカー殺人」警察が軽視した危険な公式「DV加害者はエスカレートする」

   ストーカーがその対象を殺害するといった事件を振り返ると、それはさまざまな段階やシグナルを経て起きているように見え、どこかで防げたのではないかと考えさせられることが多い。

   ストーカー男性が元交際相手の女性の実家を襲撃して、母親と祖母を殺害した「長崎ストーカー殺人」もそうした事件の典型例だろう。番組は「なぜ家族まで~検証・長崎ストーカー殺人~」と題して取り上げた。

誓約書や警告で済ませ、被害届受理せず

   それによれば、長崎県出身の23歳の女性は去年夏頃、千葉県習志野市のマンションで、ネットで知り合った男とマンションで同居するようになった。ところがこの男、同居直後から女性に暴力をふるいだしたため、女性は長崎県の実家に避難。父親は警察に相談した。しかし、警察(おもに習志野署)は男が女性にケガをさせたり、女性宅周辺をうろつくといった事件性のある行動をしていたにも関わらず、誓約書や警告で穏便に済ませ、女性らが出そうとした被害届もすぐに受理しなかった。

   警察がその強大な力を順当に使っていれば、今回の事件は防げたはず――と考えるのはいたって妥当だろう。なぜそうならなかったのか。「事件の深刻さに思いが至っていないということに尽きる」(NHK記者)のだそうだ。

女性取り戻すためには手段選ばず

   ゲストの後藤弘子・千葉大学法科大学院教授は、今回のストーカーが元々「DV加害者」であった点が重要で、それが軽視されていたのではないかと指摘する。

   DV加害者(往々にして男である)は相手の女性を人間として見ていず、すべて自分の思い通りになる存在と考える傾向がある。その女性がいなくなると、とにかく手元に取り戻したい、自分にはその権利があるといった発想になりやすいという。そのためには手段を選ばず、ストーカー、暴力を含むあらゆる手段を取り、行動をエスカレートさせていく恐れがある。危険は被害者だけではなく、被害者の家族にまで及ぶことも想定されるという。

   話をごく単純化すると、DVとストーカーの組み合わせは危険性が高く、とくに要注意だということで、警察にもぜひ覚えてほしい公式だ。

ボンド柳生

NHKクローズアップ現代(2012年1月24日放送「なぜ家族まで~検証・長崎ストーカー殺人~」