2024年 4月 25日 (木)

米長永世棋聖ついに敗れた「ボンクラーズ」挑発してミス誘うしたたかさ

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   永世棋聖が歴史的敗北を喫した。コンピューターがプロ棋士並みの頭脳を手に入れたことに驚かされたが、どうやってコンピューターは人間の頭脳に近づくことができたのか。「永世棋聖vsコンピューター」の対局を通して、人間の頭脳を持ち始めたコンピューターの軌跡と可能性を内多勝康キャスターが追った。

奇策にも慌てず、「大山康晴名人と指していた感じだった」(米長)

   コンピューターに人間と同じような頭脳を持たせようと人工知能の研究が始まったのは1950年代だ。チェスを相手に研究が進み、1997年にチェスの世界チャンピオンを下すまでに進化したが、究極の頭脳ゲームいわれる将棋でプロ棋士に近づくのはまだ遠い先と見られていた。チェスに比べて、将棋は10手指す間におよそ10京(1京は1兆の1万倍)通りもの局面が考えられるとされ、「81マスの宇宙」と呼ばれているほど複雑だからだ。

   今回、対局したのは日本将棋連盟会長で、現役時代に19のタイトルを獲得した米長邦雄永世棋聖と将棋ソフトの「ボンクラーズ」である。ボンクラーズは3年前に開発された後も改良を重ね、今ではアマチュアトップクラスでは歯が立たないほど強く、勝率9割5分を誇っている。

   対局は米長がコンピューターの弱点を突く形で始まった。「あえて最善でないことをやる。手がいくつもある局面に導き、問題を複雑化する」という作戦だった。さすがに、ボンクラーズが押され気味に進む。米長の狙いは、玉の周りに駒を従え、そのまま敵陣へ突入する入玉。コンピューターにはない、プロ棋士独特の大局観、勝負勘だ。

   ところが、米長が「狙い通り」と思って運んでいた中盤で、ボンクラーズが飛車を左右に動かすだけという奇妙な動きを見せ始めた。控室の映像で観戦していたプロ棋士たちは、米長が玉の前に築いた壁をボンクラーズが攻めあぐんでいると楽観していた。しかし、当の米長は違う見方をしていた。「あれは私が襲いかかるのを待って、カウンターパンチを狙っている刺し方。極めて実践的で、私が挑発に乗るのを待っていた」という。

   開始から3時間後、米長が玉を一段上げて8三玉に、さらに遠くの金を玉に引き寄せたことから形勢逆転する。米長の鉄壁の守りが突き崩され、113手目でボンクラーズが永世棋聖を打ち負かしたのだ。終わって米長は、「私の間違うのをじっと待っていた。そういう点で(昭和の名人)大山康晴と指していた感じだった」とため息をついた。

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