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この夏は「守りの節電」から「攻めの節電」家庭でもやる電力需給調整

   キャスターの国谷裕子は「大飯原発の再稼働あるなしに関係なく、電力需給は待ったなしの状態に入っています。夏のピーク時にこれまでの電力を供給するというのは限界を迎えています。こうした中で、私たちは節電とどう向き合えばいいのかを考えます」と伝えた。

米国・カリフォルニア州では余計な電気使わなければ値引きや報酬

   東京・足立区に本社があるスーパー「ベルクス」は、各店の店長が定期的に店内を回り、ムダに電気が使われていないかをチェックしている。ある日、店長の目にとまったのは総菜調理用のフライヤーだった。この店では常時4台のフライヤーを稼働させているが、この台数を減らせないかとスタッフに相談した。スタッフは「客足が少なくなる午後1時から2時の間なら、1台は止めることができます」という。これで年間でかなりの電気料金が削減できたという。

   国谷「このコスト削減には、これまでの仕事に関する考え方、取り組み方を変えるという発想があったようです」

   北九州市に住む主婦は朝5時に起きて、すぐに消費電力が大きいとされる電子レンジでその日1日分の食事の下準備をはじめる。朝8時までが一番電気料金が安いからだ。欧米の電力事情に詳しい富士通総研主任研究員の高橋洋氏はこう話す。

「これまで電力会社は、どれだけの電力が必要で、それに対してどれだけ足らないのかという情報を発信してこなかった。今後はそういう情報発信が必要です。米国・カリフォルニア州で行われているデマンド・レスポンスは、消費者が余計な電気を使わなければ電気代が安くなったり、報酬がもらえるという仕組みです。これまで電力会社に任せきりだった電力需給調整に、電力を使う側も当事者意識を持って積極的に関わっていこうという発想から始まりました」

   国谷「仕組みは分かりますが、誰がどのぐらいの減らしているのかを電力会社はどう把握しているのでしょうか」

   高橋「この仕組みが始まってすでに3年経っています。電力会社は誰がどのくらい電気を減らしているかというデータを蓄積しています」

建設機械メーカー・コマツ「生産効率最優先転換して消費電力の50%削減」

   家庭よりもさらに大幅な電力不足・電気料金の値上げを迫られる生産現場でも新たな試みが始まっている。建設機械メーカーのコマツは、これまでの生産効率最優先から転換して、消費電力の50%削減を目標に掲げ、生産ラインの徹底した見直しに取り組んでいる。

   高橋「電力システムの構造改革が必要です。これまでは電力会社に丸投げ状態でしたが、技術分散型にする必要があります。そうすれば消費者の行動も変わるでしょう。これまで節電といえば生活を守るための守りの節電でしたが、今後は攻めの節電に変化するでしょう」

   野田首相は「国民生活を守るため」として関西電力・大飯原発の再稼働を決めたが、こうした「節電」の提案はない。需用者の節電は電力会社の独占経営にマイナス要因だからか―。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2012年6月11日放送「日本を変える『節電革命』」