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ギリシャ再選挙「究極の選択」ユーロ離脱で国家破綻か、緊縮策で生活破綻か

   ギリシャで17日(2012年6月)に行なわれる議会再選挙を世界中が注視している。先月の選挙で緊縮策に反対する勢力が急伸して、連立政権が作れなかったためだ。結果次第ではギリシャのユーロ圏離脱もありうる。信用不安の連鎖でヨーロッパから世界恐慌にもなりかねない。

世論調査では両派拮抗

   放漫財政から巨額の財政赤字をかかえるギリシャは、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)の支援を受け、緊縮策で財政再建に取り組んできた。公務員15万人削減、年金20%カット(平均)など、厳しい緊縮策は国民の生活を直撃。中小企業の倒産が2年で6万社、失業率20%は若者では2人に1人、自殺者の急増も招いた。これが先の選挙で「緊縮策破棄」を訴えた急進左派連合の議席を5倍にし第2党に押し上げた。「外国から押し付けられた結果だ」という主張が都市部の低所得層の支持を集めた。対する新民主主義党は、緊縮策を守りユーロ圏にとどまるべきだとする。ユーロ圏離脱は破滅につながると危機感を訴え、「左派連合はまやかしだ」と訴える。

   左派連合支持のカラサビーディさんは公務員削減で失職。配管工の夫と子ども2人、義母との5人家族だが、去年から家賃が払えず義母の家に住んでいる。心臓病の義母の薬代は負担率が上がり、月30ユーロが200ユーロになった。頼みの義母の年金も減った。「緊縮策では生活できない」という。

   輸入雑貨店を営む男性は、前回選挙では左派に投票したが、今回は新民主主義党にと思っている。売り上げは半減したが、ユーロから離脱したら仕入れ値が上がって成り立たない。「左派は現実的でない。ユーロ圏に残るためには仕方のない選択だ」と話す。

   緊縮策を破棄すればEUとIMFの支援は止まり、ユーロ離脱でギリシャは破綻するとだれもがわかっている。にもかかわらず、先の世論調査では、新民主主義党28.8%、急進左派連合27.0%と拮抗しているのだ。「わかっているのになぜ?」。ここが一番わからないところだ。

最大の支援国ドイツでは「もう見捨てろ」60%

   ニッセイ基礎研究所・主任研究員の伊藤さゆりさんは、「放漫財政で支持基盤を広げてきた旧2大政党への反発票が左派へいっている。左派もユー ロ離脱はしないといっている。EUなどとの支援交渉を考えているようだが」という。ユーロのとどまっても緊縮策緩和ではIMFは応じまい。一番怖いのはユーロへの不安が、ポルトガル、スペインなどへ飛び火することだ。EU諸国もそれは望んでいない。

   ギリシャ支援をリードするドイツのメルケル首相は、「ギリ シャ国民が賢明は判断をするよう望む。ユーロ圏に残ることが私たちの望みだ」という。ドイツはユーロ圏貿易で一人勝ちだが、ギリシャが切り離されるとドイツにもはね返る。ただ国内の空気は厳しい。ミュンヘンでの抗議集会の参加者は「ギリシャにはもう十分やった。後は自力でやれ」と言う。ドイツの支援総額は575億 ユーロ(6兆円)。世論調査では「ギリシャはユーロ圏を去るべき」という声が、昨年11月の49%から60%になった。

   金融機関も損失は織り込み済みという。「金はもう帰って こない。ギリシャには何も期待しない」。しかし、ユーロの信用が失墜すれば、その影響は借金棒引きどころの騒ぎではなくなる。伊藤さんは「欧州統合は平和のための政治プロジェクト。 これを守っていこうという『意思』と国民に説明していく力がカギだ」という。

   いえてる。何百年も抗争を繰り返してきた欧州諸国が、第2次大戦のあと50年をかけてたどり着いた一つの理想がEUである。EUの指導者にその力はあると思いたい。ただ、ギリシャ人の気質は読めなかったようだ。やっぱり、ヨーロッパじゃないものなぁ。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2012年6月14日放送「ユーロ離脱か残留か ギリシャ再選挙の行方」)