「社長がいない」。だからなんだと言われるかもしれないが、いまこれが大問題で、さながら社長大不足、大公募時代の様相を呈しているらしい。なんでも日本企業の6割以上が後継者難に悩み、社長のなり手がいないとの理由で黒字廃業する会社が年に7万社もある。ネットの求人情報サービスを見れば、社長の求人が後を絶たない。
「クローズアップ現代」によると、テレビでよく見る(見た?)あの「リーブ21」の社長も次期社長を公募したという。「社長にふさわしい人材が育っていない」のに悩んでのことだとか。
社長といえば、なりたい人は決して少なくないはずだが、なんでそう人材不足なのか。このニッポン国はただでさえ縮み行く一方で、経済通にこれから100年衰退するなどと予想されてるだけに、そこで会社の舵取りを担う社長に求められる能力、責任は右肩上がりで、肩にずしりと重たいであろうことは、ハタのハタから見ても想像に難くない。
そしてイマドキの社長に欠かせないのがグローバル化への対応能力だという。世界に目を配り気を配り、世界でスピーディーに商売しないと世界大競争を勝ち抜けない。経営センスにすぐれ、海外のことがわかっててエイゴが喋れて、できれば若いのがいい。そんなのウチにはいないから、ネットで見つけよう!――といったことらしい。
そうして社長を公募した会社のなかで、番組では失敗例がメインに取り上げられた。自動車の鍵をつくるある国内大手メーカーは、2年前に社長を公募した。年収3500万円の条件に1700人以上が殺到した。この会社が目論んでいたのも海外進出だった。日本の自動車メーカーばかりと商売してても将来は先細りで、そのうち潰れるという危機感から、海外メーカーにもたくさん鍵を売ろうと考えたのだ。そこで次期社長に選んだのは、海外事情に通じる元外交官。さっそく海外での新規工場立ち上げを任せたが、自動車産業の知識や経験が不足していたためうまくいかず、早々に退社したという。
スタジオゲストの守島基博・一橋大学大学院教授は、「海外経験や語学の能力と、企業を運営、経営する能力とは全く別のもの。日本企業には海外経験のある人は多いが、経営の経験がある人が少ない」と言う。海外を通せば経営が通らず、経営を通せば海外が通らない。日本では両者を並び立たせるのはむずかしいようだ。
ボンド柳生
*NHKクローズアップ現代(2012年9月4日放送「社長がいない 求む!グローバル時代の経営者」)