2024年 4月 19日 (金)

患者ビッグデータ掘り起こせ!カルテ、医療費、検査データ総合チェックでムダな治療削減

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   不適切な薬の投与や必要のなかった手術、入院など、これまで見えてこなかった医療のムダを可視化して、治療の質向上やムダを改善する試みが始まっている。改革を進めている大学病院では、患者の入院日数を平均6日間短縮し、医療費の大幅削減に成功しているケースも出ている。

   根っ子にあるのはこれまでバラバラに保管され十分活用されてこなかった患者のデータである。カルテや検査、手術の記録、医療費の明細書などを結びつけて、ビッグデータとして活用することで、最低限の治療費で質の高い医療を実現するヒントが見えてくるという。

   高齢化社会が急速に進み、国の医療費は過去最高の38兆円に達している日本では改革は緒についたばかりだ。どうすれば最低限の治療費で質の高い医療が実現できるのか。

経営改善し年間収入2倍近くになった岐阜大学付属病院

   眠っていた患者のデータを積極的に活用するには何が必要なのか。年間のべ50万人の患者が治療を受ける岐阜大学付属病院は、国からの補助金が年々減少していくなかで、9年前から経営改善のための思い切った改革に踏み切った。まず、医師やデータ分析の専門家を加えたチームつくった。リーダーの医療経済学が専門の紀ノ定保臣教授が目を付けたのは、それまで部署ごとにバラバラに保管されていたさまざまな患者のデータだった。

   カルテから手術の記録、CTや血液の検査データなどを結びつけて分析してみると、医療のムダや質を向上させるヒントが見えてきた。浮かび上がったのが年間4000件以上にのぼる手術に潜む問題だった。

   手術は患者の治療結果を左右するだけでなく、入院期間や医療費にも大きく影響する。カルテと手術記録を組み合わせて分析してみると、術後わずか1週間以内に再手術するケースが200件余り見つかった。疑問に思い、過去10年近くのデータを詳しく分析したところ、最初の手術で予定時間をオーバーしているケースが数多くあり、とくに3時間以上オーバーしているケースでは再手術の割合が2倍以上も高いという数値が出た。

   本来、手術の予定時間は事前の検査結果などから慎重に決められる。ところが、医師に聞き取り調査してみると、「見込み違い」「予定時間を低く見積もりすぎ」「臓器状態の悪さを把握できなかった」など手術前の準備が不十分で再手術につながったケースが多いことが分かった。

   そこで、最初の手術が3時間以上延びたときは、担当した医師に必ず理由を報告させるようにした。その結果、医師たちは術前の患者の容態把握に力を入れるようになり、再手術の割合が30%減少した。

   病院経費の2割を占める薬剤費の削減にも取り組んだ。とくに大量に処方する抗生物質を医師がどのように処方しているか、薬剤師がカルテや検査のデータをリアルタイムで見られるようにした。これによって、不適切な抗生物質の使用を改善できた患者は年間200人にのぼっている。

   岐阜大付属病院で9年前から始まった改革は今では経営改善につながり患者数は年間10万人も増え、病院の年間収入は以前の1.8倍、180億円近くになったという。

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