2024年 4月 23日 (火)

水道がなくなる!?耐用年数過ぎボロボロ...追い付けない自治体の施設更新

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   蛇口をひねればいつでもどこでも安全な水がある。普及率97.7%、総延長60万キロ――世界一といわれた日本の水道がいま危機にある。高度成長期に整備された水道が一斉に耐用年数を迎えているのだ。水道管事故が年間2万6000件と急増している。自治体は「このままでは維持できない」というが、料金収入が減り、更新の予算も計上できない。

人口減少で使用量減り値上げもできず...

   埼玉・秩父市役所の休み明けの朝は電話で始まる。水道管の漏水・破裂の通報だ。年間700件もあるが、担当者はたった1人。耐用年数の40年を過ぎた水道管は総延長600キロの2割、120キロもある。毎年10キロが耐用年数に達するが、更新できるのは6キロだけだ。漏水率は実に30%にもなる。

   秩父市は11年前に水道管の更新計画を立てた。給排水管の更新に41億円が見積もられた。料金値上げはせず企業債を出した。企業誘致で使用量が増えると見込んだのだ。実際は、逆に企業は流出し、人口は減って赤字になった。計画は縮小せざるを得ず、水道管更新は大幅にペースダウンした。今年度中の料金改定が検討されている。「あのとき手を打っていれば(料金改定)、ここまでにはならなかった」と担当者はいう。

   日本の水道は市町村の公営事業だ。施設の整備・更新は水道料金で賄い、独立採算が原則である。一方で、水質、設備は全国基準だ。しかし、地方は人口減少で水道使用量が減り、料金収入が施設更新費用に追いつかなくなっているのだ。この危機に、総務省は今年(2014年)、全国の自治体に水道管の更新計画を立てるよう求めた。料金見直しはもちろん、施設や設備の廃止・統合、完全民営化も視野に入れるよう求めている。大村慎一・公営企業課長は「最悪の場合、老朽化が放置されることもありうる。先を見た工夫が必要です」という。

   京都市は昨年、更新計画を立てた。きっかけは2011年の水道管破裂事故だ。老朽管が破れ、周囲のガス管まで破損して、市がガス会社、近隣住民へ払った補償は10億円にもなった。計画では浄水場の一部廃止、職員削減と32年ぶりの料金値上げで81億円を捻出、年間の水道管更新も14キロから30キロに増やした。

   ところが、予想より早く壊れるケースが続出した。土地が酸性で腐食が早かった、工事を急いだために地表に露出していたなど、思いもよらぬ事態に苦戦している。

岩手・矢巾町「住民参加で更新の順位話し合い」病院・学校を優先

   作新学院大の太田正教授は「更新投資は増収にならない。やるほど経営は苦しくなる。料金改定も議会の議決が必要で政治的になる。独立採算といいながら、経営の自律性が確保できないんです」と水道経営の矛盾をいう。

   さらに、人口減少は数ではなく密度に関わる。まばらに住んでいれば効率は悪くなり、地形、水源など地域の要件が加われば負担は大きくなる。「地域の特性を反映できない仕組みになっているんです。バスを満員で走らせるか、ガラガラで走らせるかと同じですね」

   岩手・矢巾町では全体220キロのうち毎年5キロが耐用年数に達する。もちろん、全部を更新する余裕はない。そこで6年前から住民の意見を入れた運営をしている。全世帯の1割にあたる1000軒がミーティングで水道問題を話し合う。

   たとえば、「どの水道管を残すか」の優先順位。話し合いで、病院・学校など公的重要度、水道菅の太さなど5つの基準で点数をつけ、トータルで高いところから更新の優先順位をつけた。料金についても話し合う。お金の納得できる使い方、何をあきらめるか、はては水道はどうあるべきかに及ぶ。合意の上での運営だ。住民は「人が少ないところは、いざとなったら給水車とバケツでも済むんだから」と話す。なんと素晴らしい言葉。たとえガラガラのバスでもいつまでも走り続けてと祈りたくなった。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年10月16日放送「押し寄せる老朽化 水道クライシス」)

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