2024年 3月 28日 (木)

マグロ握りもう食べられない!尻抜け日本の漁獲制限・・・早い者勝ちで乱獲とまらず

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   このままでは食卓から馴染みの魚が消えてしまう。日本の沿岸から200海里は漁獲の権利がある排他的経済水域で、その面積は世界6位だ。かつては年間900万トンを超える海の幸をもたらしてくれたが、いまは300万トンと3分の1である。

   乱獲と温暖化による海水温の上昇が原因と見られ、価格は高騰してホッケは昨年(2014年)の2割高、アジは2倍になっている。過去最低の水準に近づいている太平洋クロマグロはもっと深刻だ。適切に管理すれば成長産業に育成することも可能なのだが、痛みが伴うだけにうまくいかない。どうしたら水産資源を回復できるのか。

ヨーロッパでは漁船ごとに上限設定

   北海道・寿都町ではホッケ漁師が深刻な不漁に直面している。03年に17万トンあった水揚げがここ10年で5万トンに減少し、大幅な収入減になっているのだ。札幌の中央卸売市場では、1キロあたり1890円、1尾1500円前後と昨年の2倍に跳ね上がり、いまや高級魚だという。ホッケだけではない。アジやサバなど食卓に馴染みの深い魚が軒並み不漁になっている。

   サバ漁の漁師は殖魚のエサにしかならない小さなサバの群れに網を入れる。「たとえ自分が捕らなくても他の船にとられてしまう。規制のない現状では収入を得るためにやむを得ない」という。

   欧米諸国に比べ、日本には漁獲量を制限する規制がないに等しい。国が漁獲制限してきたのはマイワシ、サンマ、マアジ、ズワイガニ、スケトウダラ、スルメイカ、サバなど7種類があるが、漁獲の上限が実際の漁獲量を大きく上回っており、早いもの勝ちの漁獲競争に歯止めがかからないのが現状である。

   なかでも危機的状況なの太平洋クロマグロだ。漁期は夏の5~7月と冬の12~2月の2回だが、マグロ1本釣りの長崎県壱岐の漁師、中村稔さんは「魚群探知機の反応は何もない。あり得ないぐらい厳しい。このままでは漁師を続けていられなくなる」と頭を抱える。

   危機感を募らせた中村さんらマグロ漁師は今月7日(2015年4月)、思い切って今後3年間、マグロの産卵期に当たる夏場(6~7月)の2か月間を禁漁にする案を話し合った。日本海を回遊するクロマグロは6~8月にかけて山陰から北陸の沖合で産卵し数を増やしていると見られているからだ。この時期の漁を控えてマグロ資源を回復させようという苦渋の選択である。

   しかし、マグロは回遊魚なので、日本海のすべてを対象にした規制でないと意味がない。壱岐だけで禁漁を行っても効果には限界がある。ネックになっているのが、腹に数百万個も卵が入った産卵期のマグロを狙った巻き網漁だ。批判を受けた鳥取・堺港の山陰旋網漁協は、漁獲量の上限を設定するなど自主規制を行っているが、相田仁組合長は「夏になるとマグロ以外の魚種もとれなくなる。その日の漁で暮らしを立てている漁師も多い。漁獲量を減らすのは大変厳しい」と禁漁には否定的だ。

   絶滅危惧種に指定された大西洋クロマグロの漁場を持つヨーロッパは、各国の厳しい漁獲制限によってマグロ資源を6年間で推定3倍に回復させ、安定的に利益を上げている。約6万トンあった漁獲量を実質8割削減するという厳しいもので、それも船ごとに漁獲量を割り当て、3歳未満の幼魚は原則漁獲禁止、産卵場所の地中海では巻き網漁期を1年から1か月に短縮した。漁には監視員が同乗し、違反が見つかると罰金などのペナルティーが科せられた。厳しい規制で廃業に追い込まれる漁業者も相次いだという。

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