女子サッカーW杯決勝、前半16分までにアメリカが4点を入れ、日本を圧倒した。なでしこジャパン(日本代表)も後半はアメリカを上回る9本のシュートを放ち、ボール支配率も53%と最後まであきらめない健闘を見せた。前回優勝したなでしこは各国チーム、とりわけ前回準優勝のアメリカに徹底的に研究されていた。
決勝試合の前日、日本代表主将の宮間あや選手は記者会見でこう語っていた。「この大会で結果を出すことが、これから先、女子サッカーを背負っていく選手たち、サッカーを始めようと思う少女たちに対して、残せることかな。ブームではなく、文化になっていけるようにスタートが切れるのではないかと思っています」
宮間の発言には日本の女子サッカーが置かれている貧弱な現状を変えたいという強い思いがあった。
華やかなW杯決勝の舞台とは対照的に、日本の女子サッカーを取り巻く環境は厳しい。日本代表選手の23人のうち5人は仕事をしながらサッカーをしている。海外でプロ契約を結んだ選手でも、日本サッカー協会から手当を受けなければ選手生活を続けられないのが実情である。
今回、初めて代表入りした有吉沙織選手(27)もそんな一人だ。昼間は横浜のフットサル施設の契約社員として働いている。週5日、朝9時に出勤して受付の仕事を片付け、利用者が使う用具の洗濯など夕方まで仕事に追われる。練習に参加できるのは夜からだ。こうした生活を5年間続けている。
日本女子サッカーの選手たちはなぜ食べていけないのか。なでしこリーグの観客動員数はW杯で優勝した2011年こそ2795人(1試合平均)だったが、以後は減り続け、今年はこれまでで1456人に半減してしまった。競技人口もアメリカとは比べものにならない。日本のサッカー選手は4800人、アメリカはおよそ200万人と40倍だ。選手層、すそ野の広さに大きな開きがある。
国谷裕子キャスターが、アメリカ女子プロサッカーチーム「フィラデルフィア・インデペンデンス」でプレーした元日本代表の丸山桂里奈さんに聞いた。「丸山さんはアメリカでのプレーの経験もお持ちですが、アメリカの環境はどうなんですか」
丸山「アメリカに行ったときに、『日本ではプロじゃないよ』と言ったら、『何のためにプレーしてるの』と驚かれました。アメリカでは私もプロだったので、家とクルマが用意されている環境でした。日本のサッカーでは、男子でもこういう環境はないんじゃないかというぐらいアメリカの環境は良かったです」
国谷「宮間選手の言葉はどのように捉えていますか」
丸山「女子サッカーを本当に文化にしていきたいと思っています。そのためには、なでしこジャパンだけではなく、なでしこリーグからレベルを上げていかないとなかなか女子のサッカーの力が上がっていかないと思います」
そんな中での準優勝。やはり快挙と言っていい。
ビレッジマン
*NHKクローズアップ現代(2015年7月6日放送「なでしこ 激闘の舞台裏」)