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日本に大量漂着「マイクロプラスチック」東京湾は世界平均の60倍!海に漂う危険な有害物質

   ペットボトルからレジ袋まで、身の回りにあふれるプラスチック製品の多くは使い捨てだ。海に捨てられるのは一部とはいえ、世界で年間1300万トンという。これらが日光や紫外線で劣化し、波と風で細かく砕かれる。大きさ5ミリ以下のものを「マイクロプラスチック」というのだそうだ。推定で世界に5兆個という。

   今月(2015年10月)、環境省が東京湾で行った調査では小さなものも採取できる特殊な網を使った。1ミリなら肉眼で見えるが、0.3ミリになると顕微鏡を使う。見つかったマイクロプラスチックは1300個。1立方メートルに6個の計算だった。日本近海の調査では平均3個。これでも世界平均の30倍だという。東京湾は60倍ということになる。

中国、インドネシア、フィリピンなど未処理のまま大量廃棄

   なぜ、日本に多いのか。世界各地で調査をしているアメリカのNGO代表マーカス・エリクセンさんによると、中国、インドネシア、フィリピンなどから流されたものが日本に来ているという。「アジアは人口も多く、廃棄物処理のインフラも整っていないからです」

   東京農工大の高田秀重教授が海鳥などを解剖したところ、肝臓や脂肪から有害物質のPCBを検出した。食べてしまったプラスチックの量と比例していた。東京湾のイワシ64匹のうち49匹から平均3個のプラスチックを見つけた。「プラスチックが化学物質の運び屋になっている」という。

   どういうことか。マイクロプラスチックが化学物質を引き寄せ、これを食べた小魚を大きな魚が食べる食物連鎖の中で濃縮されていく。最大100万倍というから驚く。「私たちが魚を食べてもプラスチックは排泄されてしまいますが、化学物質は体内に残ります」

   PCBは1960年~70年代、冷却剤などで広く使われた。これが食用油に混入したのが「カネミ油症事件」だ。今は禁止だが、東京湾の底には堆積している。同様に、石油系の薬品や過去の農薬までがマイクロプラスチックで亡霊のように立ち返っているのだという。

「マイクロビーンズ」全面禁止にしたカリフォルニア!洗剤の青い小さな粒

   先進国ではいま新たな発生源が問題になっている。洗剤に含まれる汚れ落としのための青い粒、直径0.1ミリのマイクロビーズだ。洗剤のチューブ1本に数万個といわれる。先進国の下水処理施設なら99%除去できるというが、世界を見渡してもほとんどの国は垂れ流し。いま、海を漂うマイクロプラスチックの10%を占めている。

   アメリカ・カリフォルニア州は7月(2015年)、全米で初めてスーパーやドラッグストアのレジ袋提供を禁止した。化粧品のマイクロビーズも5年後に全面禁止すると決めた。州議会議員のリチャード・ブルーム氏は「いずれ全米に影響を与 えると期待している」という。

   買い物客は袋を用意しないといけないが、「暮らしを見直せばプラスチックは減らせる」という。化粧品メーカーの中に、マイクロビーズの代わりにコーヒー豆や砂糖を使うところも出てきた。値段は2倍になったが、支持する人が多く、売り上げを伸ばしているそうだ。

   プラスチックを使ってもゴミにしない研究というのもある。群馬大の粕谷健 一教授は、生分解性プラスチックを研究している。微生物を使って分解できるプラスチックだ。溶液を入れたフラスコの中のプラスチック片が、8日目にはなくなっていた。まだコストが5倍以上だが、2年後には実用化したいという。

   高田教授は、対策には「削減」「再利用」「リサイクル」(3R)があるが、削減が第1だという。「アインシュタインは、『利口な人は問題を解決する。賢明な人は問題を避ける』といいました。避けるというのも大事です」

   海に流している量は、1位の中国353万トン、インドネシア129万トン、フィリピン75万トン、ベトナム73万トン、スリランカ64万トン・・・。米国は20位で11万トン、日本は30位で3.6万トンだ。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2015年10月29日放送「海に漂う『見えないゴミ』~マイクロプラスチックの脅威~」)