<わたしを離さないで>(TBS系)
吐き気もよおすほどおぞましい・・・綾瀬はるかに科せられた「特別な使命」臓器提供のための『天使』

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   一種のSFものと言えるが、恐ろしい話だ。原作者のカズオ・イシグロは日系英国人の高名な作家である。一応名前は知っていたが、高尚すぎて私には理解できないと思って読んだことはない。こういう物語も書く人なのね。

   ヒロイン、恭子(綾瀬はるか)の子供時代の舞台は、厳重に隔離された孤児院みたいな全寮制の学校である。もちろん場所は日本なのだが、原作の持ち味を生かすためか、昔の少女小説に出てきたイギリスの寄宿女学校のような古ぼけた施設になっている。だが、女学校ほど上等ではなく、質素なことこの上ない。子供たちの服装も、制服ではなく不揃いなのに色は一様に地味なグレーかベージュでヨレヨレ、セーターは毛玉だらけでおおむね穴があいている。一目で古着とわかる代物である。

   それでも決して扱いが悪いわけではない。食事はいかにも栄養バランスの良さそうなきちんとしたものが出される。美術に重点を置いた熱心な教育も行われていて、子供たちは健やかで幸せそうである。

   だが、高学年になると、彼らは自分たちの「特別な使命」を知らされる。「天使」として他人に臓器を提供し、身を以てその命を助けるための存在であることを。「健康な体と従順な精神」、これこそが肉体提供者となるべく施された教育の目的だったのである。

人間の手段化」肉体から必要臓器だけを切り取り、残りは廃棄

   イギリスというのは体外受精児第1号もクローン羊第1号も生み出した国で、生命を作り出す研究が早くから進んでいるようだ。そうした背景もこの物語が出てくる下地となっているのかもしれない。ドラマには出てこないが、子供たちは胚から培養されて育ってきたというわけなのだろう。

   やがて、残酷な使命を課せられて成人した恭子、美和(水川あさみ)、友彦(三浦春馬)の3人をめぐる愛と葛藤の日々が繰り広げられていくわけだが、すでに私は第2回目までで打ちのめされてしまった。

   「生まれてきた意味・生きる意味」を問いかける本格派ドラマ(公式ホームページ)とあるが、そんな紋切り型の言葉以前に、利益や欲望のために人間そのものを手段にすることのグロテスクさに吐き気がしてしまった。想起したのは、映画「マンディンゴ」(1975年)に出てきた「奴隷牧場」である。奴隷を「繁殖」させて売るための「牧場」である。そしてしばしば「繁殖」の一方の当事者は白人牧場主自身という鬼畜も聞いたら激怒するような現実があったらしい。

   しかし、このドラマの方がもっとひどい。少なくとも労働力として使うには生かしておかねばならない。肉体そのものを切り取って殺し捨てるとは究極の「人間の手段化」である。

特攻、自爆テロ、人身売買、管理買春・・・

   もっとも、口に出したくもないが、昔の特攻、今の自爆テロ、そして麻薬密売や人身売買、管理売春など「人間の手段化」が古今東西、組織的に横行しているのも事実なのだ。この作品はそれを極端な形で目の前に突き付けることにより、われわれを揺さぶってくれる。

   なお、私は今のところ、腎臓、肝臓など致命的でない臓器の移植が血縁関係にある親族間で行われる場合を除き、基本的に臓器移植に反対である。細かいことはよくわからないが骨髄移植なら大丈夫かもしれない。賛成なのは、臍帯血、腸内細菌叢(つまりウンコですね)を使うものである。捨ててしまうものだし、提供者に何の害もないだろうから。金曜日夜10時~

(カモノ・ハシ)

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