2024年 4月 19日 (金)

アスベスト「検査偽装」横行!カネかかるから手抜き・・・あなたの周りで超高濃度発がん物質

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   アスベストが社会問題になったのは11年前だ。尼崎市にあった工場周辺で中皮腫などの死者が70人を超えていた。国は対策を講じたが、飛散の元凶の建物の解体は12年後がピークという。

   アスベストは安価で優れた耐火性、保温性から高度成長期に大量に使われたが、発がん性、毒性が強く、吸い込むと長い潜伏期間を経て中皮腫や肺がんを起こす。中皮腫は発症すると2年後の生存率は3割と低い。今も毎年1400人が亡くなっている。

   国は自治体の検査を軸とした除去手順を決めたが、その後も自然状態の1000倍から数千倍という高濃度飛散がこの10年で11件も起きた。NPOの調査では、他にも50倍超の飛散が53件あるという。なぜなのか。

バレても罰金50万円!「ウソついたもん勝ち」

   NPO東京労働安全衛生センターが訪れた2階建住居の解体現場では、重機が粉砕作業をしていた。業者は「アスベストは入っていない」というが、破片を分析したらアスベストだった。建材に含まれていたのを見過ごしたのだ。粉塵が近隣の車の屋根に積もっていた。

   国が定めた手順は、事前調査でアスベストが見つかると、解体業者は自治体に届け出て、検査を受けた上で厳重な密閉作業になる。厳密にやるとコストは2倍以上になる。これを嫌って、形だけを整えた「偽装」が横行している。

   NHKが全国の158の自治体にアンケートした結果では、解体前に検査をしているのが64.5%、解体中に検査しているのが13.5%だった。法律では自治体は業者を検査する権限はあるが、従わせる義務はない。ために対応は自治体によってまちまちだ。人手不足もあって実態は業者任せ。「バレなければいい」。監視機能は弱く、不正を完全には防げていない。

   多くの患者を診てきたNPO中皮腫・じん肺・アスベストセンター所長の名取雄司医師は、「規制が弱い。突然立ち入りしないと実効が上がりません。業者はコスト優先だから、性悪説でいかないと」と話す。

   イギリス、アメリカ、オーストラリアなどは、第三者機関の立ち入りや厳しい罰金、業者の登録抹消などを行っている。日本では勧告を受けて直さない時に罰金が課されるが、「50万円くらいですから」という。コスト優先になって当然だ。

民間建物の解体これからがピーク

   今後、最大の問題は民間の建物だ。05年に政府は全国の学校、福祉施設など公共の建物の除去を行ったが、民間となると数が膨大(280万棟ともいわれる)で、国土交通省も大型の24万棟しか把握していない。国交省は先日、全国の自治体を集めて講習会を開いた。国交省担当者は「建物の劣化でアスベスト飛散の恐れがある。早急に対策が必要」と訴えた。自治体が建物の所有者を調べて欲しいということだ。すでに専門の調査員の養成は始めており、現在560人。これを全国に広める方針だ。

   しかし、個人の協力を得るのは容易ではない。アスベストがあるとわかると、建物の資産価値が下がってしまうからだ。全国に先駆けて動いている横浜市が昨年、7万棟の所有者に調査を呼びかけたが、応じたのは15件だった。横浜市はアスベストが使われていた年代に建てられた建物を調べて、地図に記入しいる。担当者は、「(尼崎の一件から)10年以上経って、市民の関心が薄らいでしまっている」という。国交省も「個人の権利もあるので、強制 はできない。健康リスクの方へ考えを切り替えてもらうよう にしたい」という。

   名取氏「厚労省の調査では、改築や解体ではなく、ただ住んでいるだけでアスベストの病気、中皮腫や肺がんになった人が100人出ています。マンションでリフォームすると、近隣の部屋の住民も影響を受けます。それが知られていないんです。 調査が義務化されていないのが大きいです」

   高度成長期に建てられた建物の解体のピークは2028年の10万棟だそうだ。東京五輪も解体を早めるだろう。アスベストを吸うと潜伏期は20~50年。このままだと、向こう何十年か、日本は中皮腫、肺がんの国になりかねない。決して誇張でないところが怖い。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2016年2月4日放送「あなたの周りにも危険が・・・終わらないアスベスト被害」)

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