「サバイバーズ・ギルト」犠牲になった同級生と成長してきた気仙沼・階上中学校あの年の卒業生たち

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   東日本大震災で気仙沼市階上地区は家屋の4割が全壊し、200人以上が亡くなった。10日遅れで行われた階上中学校の卒業式では、57人の卒業生から3人が欠けていた。卒業した生徒たちは3人への思いを胸に、今年、20歳の成人式を迎えた。彼らの5年間はどのようなものだったのか。

遺体で見つかった無二の親友・・・彼女の制服で高校通学

   滝田真央さんは亡くなった三浦美穂さんと無二の親友だった。祭りの扮装で頬を寄せ合う二人の写真がある。同じ高校へ進学するはずだった。遺体があがった時、「子どもだから」と会わせてもらえなかった。「本人に、体に会いたかったです」。以来5年間、美穂さんと向き合い続けてきた。

   「背負っている感じ。(高校へ)行きたいのに行けなかった。その分を私たちがちゃんとやらなきゃと」。美穂さんが着るはずだった制服で登校した。学校行事に部活に精一杯の高校生活を送った。「よく『死ね』というでしょ。あの言葉が嫌い。泣きながらキレちゃったことがある」

   高校を卒業して仙台の専門学校へ進んだ。忙しい日々の中で、美穂さんを思い出すことが徐々に減っていると感じている。そんな時、昔のDVDを見る。流された3人が写っている。「忘れたくない。つらい思い出だけど」。4月から写真館で働く。「大切な記憶を残す仕事」を選んだ。

   横浜の短期大学校に通う高橋駿さんは、港の水産会社で働いていた父の正弘さん(当時45)を失った。被災直後と卒業式の駿さんの映像があった。「親がダメらしい」。その父が見つかったのは卒業式の1週間後だった。棺に入れて、火葬のボタンを押した瞬間、「もう泣いてもいいんだ」と本気で泣いた。

   高校ではラグビーに没頭して父を考えないようにした。遺影を見るのも嫌だった。ようやく向き合えるようになったのは、横浜へ来てからだった。自炊で魚をさばく包丁使い、時に弁当を作ってくれた姿、「教えてくれたことが体に染み付いている」

   4月には宮城に戻って港の物流会社で働く。父と同じ海の仕事だ。中学の卒業式に用意した父へのメッセージには、「親父、おれの目標でいてくれ。初めて思った。あんたの息子でよかった」と書いていた。

5年ぶりにみんなが集まった成人式

   去年(2015年)12月、成人式の準備で卒業以来初めて仲間が集まった。卒業式では忘れられない光景があった。亡くなった畠山郁也さんの遺影を抱いて参列した父親の俊一さんの姿だ。つらいだろうと、その後も連絡できずにいた。「今なら会えるかも」と滝田さんと高橋さんらが足を向けた。

   俊一さんは「みんな大人になった」と笑顔で迎え入れた。母親のあき子さんは郁也さんが好きだった五目おこわを作った。「よかったね。同級生とお酒が飲めて」とあき子さん。俊一さんも避けてきたのだった。「心に蓋をしていた。実際に会ってみて、蓋が開いたら、嫌な感じはなかった」。あき子さんも「思い出も一緒に語れるしね。ちょっと前へ進めた」と話す。

   成人式に集まった仲間たちは、みなそれぞれに「あの日」と向き合っていた。これからもそうだろう。

   国谷裕子キャスターは作家の天童荒太さんと階上中学校にいた。「心模様はさまざまで、切ないですね。思い出すことが少なくもなるとも・・・」

   天童「亡くなった人を支えに生きてきたことが、一人で生きる強さを付けてきたということなのでしょう。悪いことではない。成長と受け止めていいとおもいます」

   天童さんは「サバイバーズ・ギルト」という言葉をあげた。「生き残った人が抱く罪悪感、自分を責める心理です。亡くなった人への愛情が豊かで思いが深いから起こる。よく、『忘れなさい』というが、そうではなく認めることです。それがあなたの愛なんだと。精一杯生きることが、誠実な祈りになるのです」

   死は常に理不尽だ。災害だけでなく事故や病気もある。太平洋戦争では70年経った今もそれが続いている。一部で忘れかけている人たちがいるようだが、あれらは「愛や祈りが足らない」ということか。なるほど合点がいく。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2016年3月10日放送「シリーズ東日本大震災 大切な人を失って~20歳 それぞれの旅立ち~」)

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