2024年 4月 23日 (火)

全国でも最悪の場所に建つ「川内原発」それでも免震重要棟建設しない九州電力の安全ないがしろ

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「木曜日夜10時前」校了直前の大地震!ほとんど記事突っ込めなかった週刊現代と週刊ポストのパワー低下

   週刊誌人間の性だろう。熊本地震が起きたときすぐこう考えた。木曜日、夜10時前、週刊現代と週刊ポストは校了の最中である。校了中にテレビかネットで地震発生のニュースを知っただろう。ギリギリ間に合ったのではないか。

   すぐに印刷所に電話して、締め切りを金曜日の朝8時まで延ばしてもらう。動ける人間をかき集めて直ちに取材を始める。最低3ページはほしい。目次も差し替える。アンカーマンを手配してデータ原稿が少しまとまった時点で書き始めてもらう。ギリギリまで取材を続け、最後は口述でアンカーマンに伝える。何とかなったはずだ。

   そう思って月曜日(2016年4月18日)の週刊現代と週刊ポストの新聞広告を見ると、週刊現代には「『南海トラフ巨大地震』は半年以内に起きる!」というタイトルがあるが、週刊ポストにはない。私の時代から週刊ポストの校了は早かった。10時頃には終わっていたようだ。週刊現代は12時前に終わることは希だった。だが、これだけのニュースを知ったからには、編集部員に連絡して取材をさせ、突っ込むべきではなかったのか。

   週刊現代にしてもわずか1ページである。私の頃と違って、印刷所が校了遅れにいい顔をしないのだろうか。編集長がそこまでいい出せないほど弱腰なのか。せっかく週刊誌の第一報を好機とは捉えなかったのだろうか。

   テレビや新聞では触れない疑問は多々ある。もし震度7の地震が川内や玄海原発の真下で起きていたら。比較的地震の少ないといわれていた熊本で地震が起きたことで、首都圏地震が早まる恐れはないのだろうか。震度7に耐えられる住宅やビルが都市部でどれぐらいあるのかなどなど知りたいことはある。

   事件ものや素早い取材を要する記事づくりをしてこなかったために、初動が遅れたのではないか。わずか1ページの週刊現代の地震記事を読みながら、そう思った。

7月再稼働予定「四国電力・伊方原発」大分の震源すぐ目の前

   週刊文春と週刊新潮は当然ながら熊本大地震の記事がトップで、ページもたっぷり取ってやっている。週刊文春のタイトルは「原発は本当に大丈夫か?」、週刊新潮は「『熊本地震』瓦礫に咲く花」。珍しく週刊新潮にしては切迫感の乏しいタイトルである。

   まずは週刊文春から。地震直後の18日の衆議院TPP特別委員会で、丸川珠代環境相兼原子力防災担当相が答弁を要求されていないのに自ら立ち上がり、こう発言した。「(原子力)規制委員会において、今のところ安全上の問題がないと判断されたと報告を受けております」

   これを拙速な安全宣言だと週刊文春も批判している。地震の震源地から半径約150キロ圏内には3つの原発がある。鹿児島県の九州電力川内原発、佐賀県の九州電力玄海原発、愛媛県の四国電力伊方原発で、川内は2015年に1号機、10月には2号機が再稼働している。

   玄海、伊方も近いうちに再稼働が見込まれている。今回の地震の震源は熊本から大分に向かって北東へ移動しているが、この断層帯の延長線上には川内と伊方原発が位置しているのだ。

   とくに川内原発は<過去に巨大噴火を起こした桜島周辺の姶良カルデラ(陥没地形)などに囲まれた『火山銀座』の内側にある>(週刊文春)ため、<「全国の原発で最悪の場所にあると言える」(井村隆介鹿児島大准教授)>

   今月6日の川内原発差し止め裁判で、福岡高裁宮崎支部は住民側の抗告を棄却したが、一方で「最新の知見でも噴火時期や規模の的確な予測は困難な状況。規制委が的確に予測できることを前提に立地評価している点で、不合理といわざるを得ない」と付言しているのだ。

   さらに、九州電力は川内原発を再稼働した後に「免震重要棟」をつくらないと発表した。玄海原発にもつくる考えはないといっている。国会の原発事故調報告書で東電の清水元社長が「あれがなかったと思うとゾッとする」といっているほど重要なものを、平然とつくらないといい出しているのである。異常というしかない。

   その国会事故調は、福島第一原発の電源が失われたのは津波の前、地震による可能性が高いと報告しているのだ。だが、週刊文春によれば、伊方原発は地震による最大級の揺れの想定「基準地震動」を570ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)から650ガルに引き上げたから安全だといっているが、<「熊本大地震は千五百八十ガルを記録しています。これは地表での数値で、原発は固い岩盤の上にあるので、その半分ぐらいをイメージすればいいとはいえ、六百五十ガルでは到底耐えられない」(岡村眞高知大特任教授)>いうのである。こうした大きな疑問に対して、規制委員会の田中俊一委員長は出てきて説明するべきだ。

「被災地視察」行きたがった安倍首相!直前に本震きて慌てて中止

   今回の大地震で専門家たちが口を揃えていうのは「南海トラフ地震」が起きる可能性についてだ。南海トラフとはフィリピン海プレートとユーラシアプレートの間に位置し、地震を引き起こすエネルギーの貯蔵庫として知られ、90~150年の周期で大地震が起きている。地震予知が専門の長尾年恭教授は、今年(2016年)4月1日に起きた紀伊半島沖の地震(マグニチュード6・1)が南海トラフの東端で、熊本地震は西の端にあたるという。「後世の人は、(今回の熊本地震を=筆者注)南海トラフ地震の予兆だったと述べることになるのではないでしょうか」(長尾教授)>

   現在、南海トラフ地震は30年以内に起きると予測されているが、起きたら被害規模は想像もできないほど巨大になる。<「死亡者は四十七~五十万人と推計されています」(立命館大学歴史都市防災研究所の佐藤比呂志教授)>

   ところで、14日の地震が起きた後に、安倍首相は被災地を視察すると言いだした。16日の早朝6時出発という日程が組まれたが、当日未明の本震が起きて出発3時間前に中止になったそうだ。

   もし行っていれば、警備や何やかやで1000人規模の人員が動くことになり、被災地にとっては、菅直人首相(当時)が福島第一原発事故直後、現地を視察したときと同様、大きな非難を浴びたであろう。安倍首相は来週24日に投開票される衆院北海道5区の補選が気になり、そちらへ応援に行きたくてならないのだが、被災地視察より先にするわけにもいかず、官邸は頭を悩ませているという。

書き込んだヤツ探し出して逮捕しろ!悪質過ぎる地震デマ「朝鮮人が井戸に毒を入れた」

   週刊文春は、震災報道でNHKが稚拙だという批判があり、テレビ朝日「報道ステーション」の富川悠太アナの株は上昇したと書いている。たしかに、NHK地方局の新米アナなのだろう、「家が傾いています」「道路が陥没しています」程度の、見ればわかることしかいえない現地ルポにイライラしたことは事実だ。

   富川アナは災害現場からの中継に慣れているから、「水を得た魚」のようにこなしていた。それに比べて、今春からTBS「NEWS23」のキャスターになった星浩氏の評価は低い。<「星さんの取材は、赤ちゃんが救出された家屋の前に佇んでいただけ。行政への問題提起など、はっきりした切り口はなく、最後に活断層について地元の首長と話したことや原発立地の問題を、その映像はないまま『報告』して終わり」(立教大学服部孝章名誉教授)>で、精彩を欠いていたと手厳しい。

   NHKについていえば、熊本出身の武田真一アナはよかった。NHKスペシャルでの冒頭「熊本県は私のふるさとです。家族や親戚、たくさんの友人がいます。(中略)また今夜も明かりのない夜を迎えることを思いますと胸が締め付けられます」と話したことで、大きな感動を呼んだ。

   週刊新潮は現地ルポを中心に、被災地で暮らしている女性タレントについても取り上げている。阿蘇の麓で暮らしていた井上晴美(41)は、最初の地震で自宅が住めるような状況ではなくなって、近くの友人宅の庭でテントを張って泊まっていた。そこへ本震が来て自宅は全壊。今は何とか空いている旅館を見つけて、そこの7畳で親子5人が生活しているという。

   週刊新潮も取り上げているが、ツィッターなどを使った悪質なデマが飛び交ったのにはうんざりした。「地震のせいでうちの近くの動物園からライオンが放たれたんだ」という程度ならまだ許せるかもしれないが、「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞ」に至っては、これを書き込んだ奴を明らかにして、悪質なひぼう中傷罪で逮捕するべきである。

   気になる地震保険についても週刊新潮は触れている。<現在、保険金額1000万円の場合、熊本県の保険料は木造で1万600円、鉄筋は6500円。これに対し、東京都は木造で3万2600円、鉄筋で2万200円となる>

   金額は年額である。熊本県の地震保険の加入率は28・5%で、全国平均とほぼ同じだという。だが、1000万円では満額もらえたとしても当座の暮らしに消えていくだけだろう。熊本地震が激甚災害に指定されれば、それなりの補償はあるのだろうが、安倍首相はなぜか渋っている。それは北海道補選前に被害を大きく見せたくないからではないかと、ネットでは批判されているが、そう思われても致し方あるまい。

   安倍首相の地元・山口県で起きた豪雨で死者・行方不明者4人、全壊家屋49棟だったが、すぐに激甚災害に指定した。今回のほうがはるかに被害が大きいのにいまだに激甚災害指定しないのはなぜなのか。

「北海道5区補選」鈴木宗男が怒ってる!せっかく応援してやってるのに俺の出番ゼロ

   週刊文春はその「補選」の現状を報じている。自民党公認で故・町村信孝衆院議長の娘婿である和田義明氏(44)と、高校中退で2人の子供を持つシングルマザー、障害者施設などで働き、5年前に北海道・札幌に移り住み、北海道大学大学院で公共政策を学んでいる池田真紀氏(43)の一騎打ちである。

   和田氏は町村氏の地盤を受け継ぎ、選挙区内に3万近い票を持つ新党大地の鈴木宗男氏が支援しているから負けようがない戦いのはずだが、現状は池田氏が互角の戦いをしていて、安倍首相は大慌てだという。

   池田氏が支持を伸ばしている背景には,共産党が独自候補の擁立を取り下げ、民共共闘が進んでいることが大きい。また、せっかく取り込んだ鈴木宗男氏だが、宗男氏と娘の貴子氏が目立ちすぎると誰の選挙だかわからなくなるという批判が後援会から出て、宗男隠しにあっていると本人も腹を立てている。

   「総決起集会に私を呼んでおきながら(応援演説の)出番も与えない。(中略)昔の町村流のやり方に固執しているのか、勝つためにどうすればいいのか分かっていないのか、不思議でなりません」(宗男氏)

   アベノミクスは失敗で円高、株は乱高下。TPPでは日本側の聖域が守られていないことがだんだん明るみに出てきた。消費税10%は先送りが既定路線となり、今さら発表してもインパクトは少ない。そこに熊本大地震が起きたのだから、もはや安倍政権はレイムダック状態になってきている。政治は一寸先は闇だとよくいわれるが、この流れを見ていると頷ける。これからの焦点は、いつ安倍首相が総理の座を放り投げるかに完全に移ってきたようだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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