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イギリス国民も後悔しきりの「EU離脱」リーマンショック来るか?世界株安や通貨不安

   イギリスの「EU離脱」の国民投票結果に、世界は同時株安に揺れ、日本も急激な円高に見舞われている。リーマン・ショックの再来になるのか。ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆりさんはこう答える。

「短期的にはショックは非常に大きかったと思います。しかし、投票日にG7が声明を出したこともあって、市場は落ち着いてきています。リーマン・ショックとの比較で言うと、あの時は一気に世界の需要が喪失して、日本でも雇い止めのようなことが起きました。今回は金融機関の破たんのようなことは起きていないので、企業マインド、あるいは家計の心理に悪影響を及ぼすようなことはないと思っています」

「ロンドン独立してEU残留しよう」あっという間に署名17万件

   問題はイギリスの分裂、ヨーロッパの崩壊といった「政治リスクの長期化」にあるらしい。国民投票結果を地域ごとに見てみると、首都ロンドンやスコットランド、北アイルランドなどの地域は「残留」支持が圧倒的に多かった。イギリスが「離脱」を選んだ以上、こうした地域は「独立=EU残留」に向かわざるを得ないという。

   残留支持を訴えたロンドンのジェームズ・オマリー氏が「ロンドン独立」を訴えるホームページを立ち上げたところ、アッという間に17万件の署名が集まったという。2年前にイギリスからの独立を問うた住民投票で独立を否決したスコットランドでも、独立の機運が再び高まっている。

   NHKの松木昭博・ロンドン支局長は「国民投票でイギリス国内の移民の問題や格差の拡大をいった問題が表面化してしまいました、パンドラの箱が開いてしまった形です」と総括した。イギリスの離脱を受けて、オランダ、フランスでも離脱の機運が高まり、今やヨーロッパの崩壊の危険性すら取りざたされる状態だ。

   離脱を支持した人たちはこうした事態を想定していたのか。「クローズアップ現代+」が街で聞いたところ、「まさかこんなことが起こるとは考えてもいなかった。どうせ残留に決まると軽く考えていました」「今すぐ残留に投票し直したい。現実を知って初めて目が覚めました」という答えが大半だった。

「国民投票はイギリスの伝統ではない。われわれは議会政治の国」

   こうなると、そもそも国家体制、あるいは国際政治に関わるようなきわめて専門的で重要なテーマを国民投票で問うことの是非が問題になってくる。国際政治学者で東京大の藤原帰一教授は「自滅的な失敗です。国民投票などやる必要はなかった」と言い切る。「イギリスはもともと国民投票を嫌ってきた国なんです。国民投票というはヒトラーとかムッソリーニとかそんな人がやるもの。われわれの議会政治の伝統ではないというわけです。これを言ったのはチャーチル政権の副首相だったアトリーです。イギリスは全国規模の国民投票っ3回しかやってないんです。一つは1975年で、欧州経済共同体に加盟したことの是非を問うもの。次がスコットランドの独立を問うもの。そして今回です。むしろ、残留という結果を出して、いろいろな問題は議会で解決すれば良かったでしょう。キャメロン首相の賭けだったわけですが、裏目に出て、保守党も労働党も空白を呼んでしまった」

   鎌倉千秋キャスター「過半数という民意のパワーも目の当たりにしたわけですが、そこはどう見ますか」

   藤原教授「国民投票の結果に従わざるを得ないでしょう。残留を求めた保守党はひっくり返されたから次の人、つまり離脱派に変えざるを得ない。しかし、労働党も保守党もこんな結果になると思ってなかったんです。国民投票を政治権力を強める手段としてつかうとどれほど大きなリスクがあるか、そのことをもう1度考え直す事件だったと思います」

   多数決、必ずしも多数ならずということだろう。

ビレッジマン

NHKクローズアップ現代+(2016年6月27日放送「イギリス『国家解体』の危機!?~EU離脱の波紋を追う~」)