2024年 3月 29日 (金)

個人請負は『平成奴隷』なにひとつ保障なく使い捨て・・・エサ与えてはしご外す「やりがい搾取」

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   個人請負―。本来は専門性や特技を生かして企業などと契約し、勤務時間などの制約に縛られずに、出来高の報酬を稼ぐ新しい働き方のはずだが、歪んだ広がりを見せていた。

   東京・歌舞伎町のホストクラブホストでは日本大、早稲田大、慶應大など、学費稼ぎの学生が増えたという。短時間の勤務で、うまくいけば高収入もある歩合制だが、すべてがうまくいくとは限らない。18歳の私大生は週に2回、午後6時から12時まで働く。親に余裕がなく、学費・生活費を自分で賄っている。入学時に480万円の奨学金を借りたが、卒業までにはさらに170万円が必要だ。生命科学を学んでいるが、研究時間と両立できるからとこの仕事を選んだ。

 

   「水商売に抵抗はありましたよ」というが、店の寮に住んで、ベッド代月に2万円はむしろ助かる。月収は現在6万円。指名の数が歩合収入に直結するから、「努力して自分を磨いて指名を増やす。稼げないと学費が払えなくなる」と話す。

 

   個人請負はこうしたホスト、エステティシャン、バイク便ライダーなどサービス業に広がっている。専門性はむしろ低い。浅草の女性向け風俗サービス会社で働く30歳の男性は、女性とデートするのが仕事だ。「バーチャルな恋人のイメージですかね」。相手は20代から60代で、月に20万円程度になる。大学卒業時に正社員になれず、さらにリーマンショックがあって非正規の仕事を転々とした。IT企業でパートの仕事をしているが、生活は苦しく、ネットで見つけたこの仕事と掛け持ちだ。仕事の性質上、「あと2年かな」という。

背景に若者と親世代の貧困拡大

 

   NPO労働相談センターの個人請負のトラブル相談は昨年(2015年)は135件だった。運送業で1日13時間も働いて手取り3212円だったとか、4年前には21歳のホストが苦手な酒を無理に飲んで急性アルコール中毒で死んだ。学資を稼ぐためだった。センターは「使い勝手のいい労働力として扱われている」という。

 

   5年前までリラクゼーション店でマッサージをしていた39歳の男性は、朝9時から夜中の2時まで、時には泊まり込みで働いた。親指が重度の腱鞘炎になって店に改善を訴えたところ、契約を解除された。失業保険はなし。いまは別の店で親指をかばいながら働いている。

 

   臨床心理士の鈴木晶子さんは、個人請負が増える理由を「まず非正規雇用の広がり(37.5%)があります。若者と若者の親世代に貧困が広がっていることが原因です」という。

 

   甲南大の阿部真人准教授は「社会学では『やりがいの搾取』といいます。個人請負は、本来、起業家精神から始まっているのですが、これを搾取している。『Bait& Switch』(エサを与えて梯子を外す)という言葉もあります」

 

   個人請負は非正規とも違って「雇用されていない」状態のため、最低賃金の保障や労働時間の規制、社会保険、労災保険、雇用保険などいっさいがない。使用側にしてみれば、単なる使い捨ての労働力。クビにしても法的にうるさいことにならないまことに都合のいい存在というわけだ。

文   ヤンヤン
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