人は職場環境によって性格が変わってくる。業務内容や周囲の人間関係に振り回されて、意外な性格がひょっこり顔を出す。いい方向に向かえば、それは人間としての成長だ。忍耐強くなったり、責任感が強くなる。けれども、逆のパターンも多い。神経質になったり、他人の意見を受け付けない頑固さになる。
どこかで自分を見失うほど仕事に取り組んだからそうなったのか、それとも評価されたい承認欲求からいつの間にか変わっていってしまったのか。昔は、そんな人じゃなかったのに。誰もが一度は言われたことがあるのでは。
職場ではホープと目されていて、仕事を精力的にこなす。爽やかな見た目も相まって、女性陣からも人気のタイプだ。そんな40代のディレクターが突然キレた。何か気に障るような発言や態度があったんだろう。周囲が思わず振り返るほどの大声で暴言を吐いて、女性をののしった。
よほどストレスがたまっていて、キャパオーバーになったんだろう。昔は怒りを抑えることもできただろうに、ホープという重責が彼を追い込んでいたのかもしれない。
50代プロデューサーは番組出演者を信用せず、独自にリサーチして持論を展開する。まず相手を否定するところから入るので、取材相手に失礼があっては大変と、番組スタッフは使わなくてもいい神経をすり減らす。
編集方法やナレーションの言葉にも執拗なチェックが入る。意図を説明しても、いっさい聞く耳を持ってくれない。最後は、オレが言ってるんだからオレの言う通りにしろよとやっぱりキレる。聞けば昔はバリバリ仕事をしていたそうだが、この頃は転々と部署を移動しているらしい。
飲み屋の2軒目も段取りしようと勝手に動き、周りの人間にイラつく30代作家はワタシだ。飲み会に途中から合流する人が、深夜にも関わらず食事をしていないという。そこで条件を満たす深夜営業の店を検索し始めた時、知人に言われた。
「昔っからそんなに段取りばっかり気にしていたっけ。どっか歩いて探せばいいじゃん。最近、ちっちゃなことに目くじら立ててイライラしてばっかりじゃない?」
ギャー、おっしゃる通りでございます。どうでもいい段取りに気をとられ、段取りの悪い人、段取りをしようともしない人にイラついて悪態をつく。昔はそんなことなかったと自覚はしている。原因を考えてみると、いま取り組んでいる番組が思い当たる。かなり段取りを要求され、細かい部分を追及されることが多いのだ。
いつしか人の目ばかりを気にするようになっていた。ミスをしてはいけないという思いの方が先に立ち、無難にこなそうともしてしまう。知人に指摘されてゾっとした。これじゃあ、番組の色に自分から染まり、染めた真綿で首を絞めているような状況だ。たった一つの番組のせいで視野や表現の幅も狭まっている。気を付けよう。気を付けよう。
そこでやっぱり大事だなと思ったのが女子会である。利害なく付き合いの長い友人と定期的に会って、現状報告をする。ただし、よく一緒に行動している人とはダメ。久しぶりにあって、互いにどんなことをしているのか話し合うことで、自分でも気が付かなかった自分を知ることになると思う。
おじさん、おばさんは昔話が大好きだ。昔話をするから、今を違う視点で見ることができる。これってセラピーなんじゃないのか。そう割り切ればいいんじゃないかしら。
モジョっこ