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<溺れるナイフ>
好感!WEST重岡大毅 ジャニーズっぽくない三枚目・・・格好良くない格好よさ

   少女マンガの実写化といったら、俺様男子に振り回される思考停止系女子か、難病ものでしょと斜に構えている人にお勧めしたい良作である。自由にならないことも多いけれど、好きな人の一言で空の色が変わってしまうくらい単純で、ピカピカの明日が毎日迫ってきていた中学高校時代が、これでもかと迫ってくる。

   漁村の大地主にして、土地の氏神様をまつった旧家の跡取りである少年コウと、東京からやってきた元芸能人の少女が「一生分、恋をした」ら、世界はこんなにきらめいた。綺麗で、幸せで、悔しくて、ヒリヒリと痛いラブストーリーだ。

  • (C)ジョージ朝倉/講談社 (c)2016「溺れるナイフ」製作委員会
    (C)ジョージ朝倉/講談社 (c)2016「溺れるナイフ」製作委員会
  • (C)ジョージ朝倉/講談社 (c)2016「溺れるナイフ」製作委員会

ため息が出る「望月夏芽」浮世離れした美しさ

   何よりも伝えるべきはキャストのハマり具合だろう。海も空もすべて自分のものと言い切る圧倒的な全能感を生身の人間がどう醸すか。二次元だから成立しえた人と神の境界にいる少年コウの危うさ・美しさを菅田将暉が体現しきっている。

   小松菜奈演じるヒロイン・望月夏芽も文句なしの名演だった。小さな顔、ピンクがかった真っ白な肌、すらりとのびた骨。おうとつが少なく、脚を投げ出してもいやらしさがない。ぽってりした二重まぶたはうっすら眠そうで、美しくも妖しい。小顔で骨格の細い芸能人の中でも別格の浮世離れした美しさが光った。

   特別な二人が惹かれあうのは周りにとっても必然に見える。コウのことをずっと見てきた少女も、夏芽に心奪われる少年も、うらやましいと思うより先に、「この二人ならどこまでも行けそうだ」と見上げてしまう。そんな脇を固める二人の演技もこれまた良い。 コウちゃんの幼馴染・大友を演じたジャニーズWEST・重岡大毅が出色の出来だ。良い意味で、ジャニーズっぽくないのだ。ナチュラルな方言しかり、決めるべきところで噛んだり、笑ってしまったりという、演出なのか、素なのかわからないリアル感が最高に良い。自ら三枚目に徹して、格好良くない格好よさがウリの役の魅力と相まって、好感度はうなぎのぼりだ。好きだと率直に語るまなざしの破壊力といったら・・・。美しいけれど素っ気なく、つかみどころのないコウちゃんよりも、大友のように「こんな風に愛しさ全開で見つめられたい」となるのは、夏芽でなくても当然の結果だろう。

「10代の純愛」声もなく泣ける青春

   楽な方に楽な方に流れていくのが大人の恋愛だとしたら、映画で描かれるのは、相手の欠点も丸ごと飲み込み、互いを傷つけあう、逃げ場のない「純愛」だ。

   選んだ終着駅が違っても、同じ切符をもっている。目を閉じればよみがえる迫りくる崖と海と山の景色。光を集めてきらきら輝いていた肌。松明の向こうにチラチラとよぎる真剣な瞳。説明できない熱情が、10代の世界のすべてに波のように打ち寄せる。説明不足の感もないわけではないけれど、青春に言葉をこらした説明なんかいらない。断片的なシーンを重ねることで、一気によみがえってくる、「あの日のこと」。声もなく泣ける映画は久しぶりです

ばんふぅ

おススメ度☆☆☆☆