2024年 4月 25日 (木)

体力作り、練習法、作戦に変化アリ 高校野球の打撃革命

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   今夏の甲子園・全国高校野球選手権大会は、史上最多の68本塁打が乱れ飛んだ。そこで6本塁打の個人最多記録を達成した広陵高校の中村奨成と、甲子園には出場しなかったが今までに109本を放って高校通算本塁打数の記録を塗りかえた早稲田実業の清宮幸太郎という2人の超高校級スラッガーに注目した。「いま高校野球で何が起きているのか」(武田真一アナ)。証言やデータから検証した。

   中村選手は高校に入ってすぐにレギュラーになった。しかし、「アッパースイングで、なおるかなと思った」(中井哲之監督)という弱点をかかえていた。そこで素振りに使ったのがカチカチバットとよぶ練習用のバット。二つの重りが上下についていて、うまく振れないとカチカチと2回鳴る。うまく振れば1回だけだ。中村はこの素振りを繰り返すことでヘッドスピードを上げ、長打力を増した。

   筑波大の川村卓・准教授は「右ひじのたたみ方が上手で、体に引きつけて振りぬく理想的なフォームになった。高校生ではあまり見たことがない」と分析する。

   早実の清宮選手は、リトルリーグ世界大会で日本チームが優勝し、知られるようになった。中学1年で身長182センチ、体重97キロ。激励に訪れたイチローが「でかっ」と驚いた映像もある。父のラグビー指導者・清宮克幸監督が自宅地下につくった専用練習場で打ち込んできた。中学時代につかったバットは、普通なら800グラムに対して1400グラムと重い。

   当時から知る川村准教授は「下半身の使い方が高校で格段に進化した。バットが水平に、ボールの下に入るので、ミートにミスがなく、速いボールにも対応できる」と評する。

   野球解説者の小早川毅彦さんは「中村は右ひじのたたみの良さが積極性につながっている。ちょっと強引なので木のバットでどうかなという点はあるが、筋肉をもっとつければもっと伸びる」「ヤクルトの山田のような攻守走そろった選手になりそうだ」という。清宮については「ほぼ完成したフォームで、左中間にも大きく打てる。すぐにプロにいっても数字を残せるだろう」「ホームランを打てるイチローになる」と見ている。

   甲子園で中村に本塁打を打たれた秀岳館高校(熊本)の鍛治舎巧監督は「ツボも持つが、穴もあると見たら甘かった。積極的な強さがある」。清宮にはインコースのストレートを簡単に本塁打されたことがあって「ボールを振らない。プレッシャーを励みにする強さもある」という。

   今年の甲子園は、各チームが圧倒的な打力で勝ち進む「打高投低」の様相だった。

   昭和49年に10本だった大会本塁打数が68本に増えたことを、智弁和歌山の高嶋仁監督は「各チームの戦術に大きな変化がある」と指摘する。

   1回ノーアウト一塁の場面で、2番打者は以前なら送りバントが普通だった。今は強硬策を選ぶチームが多くなった。「打てないけれど守備がいいからという選手が1人や2人はいたものだが、今では4番も8番も9番も変わらない打力がある。チャンスならいけーっという感じです」

   東海大菅生では去年(2016年)秋から週に一回、筋力トレーニングに専念する日を設けた。とくに下半身の強化に力を入れ「選手の尻まわり100センチ」をめざす。食事も体を大きくするために、コメや麺を毎晩1キロ食べるのがノルマだ。大会中も筋トレをつづけた。

   横浜高校は、2年前に平田徹監督が就任してから、ゆっくり投げるボールを木のバットで打つロングティー練習を取り入れた。「姿勢をよくするとともに遠くに飛ばす」ことで長打力を追求する。「選手は自分の成果を実際に見て、向上心がさらにつく」という。

   本塁打が増える一方で、送りバントは平成18年の238から今年の甲子園では165だった。

   ノーアウト一塁の2番打者がバントをする率は73・9%から47・4%までになった。

   鍛治舎監督は「この流れは変わらない」と見る。小早川さんは「メジャーでも、データから野手にシフトを敷かれるので、フライを上げて頭を超えろという方向です」と解説する。

   小早川さんは「スケールの大きい打者が出てきてほしい」としながら「努力をしたものが勝つ点は変わらない。変わらない努力が野球を変える」と強調した。

   武田キャスターは「すぐれた選手が出るといいですね。ワクワクします」と結んだ。

   進化は確実にしている。大味にならずに、豪快に。ファンを楽しませてほしい。

クローズアップ現代+(2017年8月28日放送「高校野球の"怪物"たち 最多本塁打はなぜ」)

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中