2024年 4月 16日 (火)

ヨーロッパ、中国で進むEVシフトに日本メーカーはどうする?

人気店や企業から非公開の招待状をもらおう!レポハピ会員登録

   電気自動車(EV)の開発競争とガソリン車からの切り替えが加速している。

   世界最大の自動車市場・中国は、大気汚染対策もあって、ハイブリッド車を飛び越えてEVシフトへ舵を切った。世界トップクラスの自動車産業へと国を挙げて後押しする。

   ハイブリッド車が主力の日本は、トヨタやホンダがEVにはまだ時間があると考えていたのだが、世界の流れとはどうもちがう。550万人を雇用する自動車産業、とくに部品メーカーの危機感は強い。

   2025年までに全車をEVに切り換えると打ち出したノルウェー。街にはEナンバーの車が目立つ。モーターとバッテリーで走り、ガソリンを使わない。購入税や消費税が免除され、高速道路は無料、バスレーンを走ることもできるという優遇ぶりだ。「バッテリーが不安でしたが、全国に1万のスタンドがあるので安心です」と話す女性ドライバー。今では新車の20%をEVが占める。

   ヨーロッパのメーカーはEVシフトだ。おととし(2015年)にディーゼル車の排ガス不正が発覚したドイツのフォルクスワーゲンは、EVで巻き返しを図り、2兆6000億円を投資する構えだ。BMWも年間10万台の増産を打ち出し「全工場で生産するように投資を拡大する」という。

   中国ではガソリン車よりもEVを優先的に購入できる。「ガソリン車は3年間買えなかったけれど、EVは1カ月で買えた」と女性が話す。ガソリン車の技術ではヨーロッパや日本に太刀打ちできないが、EVなら対抗できると考えているらしい。

   従業員22万人の中国メーカー「BYD」は1995年に20人のベンチャー企業としてスタートした。EVバスで実績を作り、国の補助金を受けて電池開発に成功した。今は普及にも力を入れ、400台を一度にできる充電タワーを設けてアピールする。幹部は「前途洋々のEV市場に間に合った」と自信を深める。

   2030年には世界でEVの生産がガソリン車を上回るとの予想もある。

   日本では、ガソリン車、ハイブリッド車、燃料電池車、それからEVという考え方が強かったが、どうやら一足飛びの様相だ。

   野村総合研究所の田中雄樹さんは「中国はガソリン車で追いつけなかった反省があり、EVへの本気度は高い」と見る。EVはガソリン車より部品が少なくてすむ点も、開発しやすいと読んだらしい。中国の電池メーカーの製品を使わないと補助金を出さないといった露骨な振興策もやっている。

世界は二極化するとの見方も

   自動車アナリストの中西孝樹さんは、こうしたEV絶対の風潮に「待てよ」と慎重だ。「中国には危うい面もある。一気にEV化が進むというのは、目的がまず先にある。思惑通りにいくとは限らない」「世界でも地域によってばらつきがある。ヨーロッパや中国でEVが普及しても、東南アジアや日本ではそうでもない。二極に分かれる」と分析する。

   たしかに、中国の戦術にうっかりのせられると、持てる技術も活かせない、活路も見い出せずに技術だけを盗まれることになりかねない。対応は必要だが、安易に浮足立つのは危険でもある。

   日本でも日産が7年前からEVを発売し、2022年までに12車種にするという。トヨタは9月(2017年)にマツダとEV開発の新会社を設立した。ホンダは10月に生産体制の見直しを発表した。業界が揺れている。

   9月に都内で開かれたEV関連の展示会には国内の部品メーカーがつめかけた。EVが普及すれば、部品メーカーには死活問題。「こんなに急に広がるとは」「危機感しかない」の声も聞かれた。

   すでに動き始めた企業もある。機械系中心だった採用方針を電気系60%へと切り換え、新製品開発に着手する。9月下旬には上海の商談会に参加し、中国メーカーから開発スピードを上げるように勧められたそうだ。社長は「大手メーカー一社に依存するのではなく、体力をつけないと生き残れない」という。

   田中さんは「中国企業は技術的に未成熟でも投資するから進化が早い。逆転される可能性もあり、日本の脅威になる。今からEVの部品開発をやる方がいい」と語る。一方の中西さんは「やみくもに追いかけると中国の思うつぼ。日本の技術を磨きこんでいけば競争力は上がる」と見る。

   その中西さんも、従来のやり方にとどまっては「ひっくり返される」としたうえで「まだ時間はある。技術力におごらず、将来を見据えて再投資が必要」と指摘する。

   「今のうちから備えろ」という点では、二人は一致する。時代が変わりつつあるのは間違いない。問題はその方向だろう。中国にうかつに操られてしまっては、おいしいところだけを持っていかれる。

   武田真一キャスターは「世界のEVシフトは驚きでした。変化のスピードを見極めることが重要です」とまとめたが、EV時代をビジネス面でとらえるだけならテレビ東京の経済番組と変わらない。

   EVは果たして良いことづくめか。排ガス削減に優れているというのも車体だけの話で、その消費電力にかかる発電エネルギー資源とのバランスで環境への負荷がどれほどかかるのか、かからないのかの追究も必要だ。NHKの看板番組としては、もう一つ底が浅い。

クローズアップ現代+(2017年10月16日放送「世界で加速EVシフト 電気自動車めぐる攻防 先行する中国に日本は」

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中