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「女帝[エンペラー]」
愛する人を守るため 「虫唾が走る男」に抱かれる王妃の悲劇

【 365日映画コラム 】
07/6/ 4 コメントを見る・書く(1)
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   女帝なら「エンペラー」でなく「エンプレス」だろうが、学生が間違った英語を覚えたらどうするんだ、などとブツブツ言いながら映画に入る。うん、これは「ハムレット」だ。主人公は王子でなく、その母の王妃なんだ。おまけにバックにはプッチーニーの「トゥーランドット」風の豪華宮廷オペラ的雰囲気もある。制作費2000万ドル(24億円)をかけて中国だけでは元はとれない。日本をはじめ世界に売り込んで利益が上がる。チャン・ツィイーという世界的な女優がいるから可能であって、日本にはそんな女優がいないし、映画に金をかけない日本では出来ない作品だ。

(C)2006 Media Asia Films (BVI) Ltd. Huayi Brothers Film Investment Co.Ltd. All Rights Reserved.
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   フォン・シャオガン監督は「夢の請負人」や「ハッピー・フューネラル」など現代北京の庶民をコメディタッチで描いて面白い軽い映画を送り出している。しかしこの大作は今までの作品と異なる。活劇を担当する監督にワイヤーアクション指導の第一人者のユエン・ウーピンを起用して派手な立ち回りを見せる。主演の王妃ワンを演じるチャン・ツィイーは今や押しも押されもせぬ世界的スター。「グリーン・デスティニー」「ラッシュアワー2」「SAYURI」などと立て続けにハリウッド映画に出演。久しぶりの中国映画だ。実の兄を殺してワンへの欲望を満たそうとする新帝リー役にグォ・ヨウ。「さらば、わが愛/覇王別姫」でも悪役だった。父を恨む皇太子ウールアンにダニエル・ウー。香港映画で活躍し「香港国際警察/NEW POLICE STORY」に出演している。

   古代中国の五代十国時代(と言っても分からなくて調べたら10世紀後半の頃)、国と国、皇室内部でも争いが絶えない。ある国で皇帝が突如暗殺される。策略を企てた弟のリー(グォ)が新皇帝に即位する。皇帝が皇太子ウールアン(ウー)の暗殺も企てていることを知った先帝の王妃ワン(チャン)は、夫殺しのリーとの結婚に同意する。新帝は権力とワンの両方を望んでいたのだ。昔ワンは義理の息子の皇太子に想いを寄せており、そのウールアンを守るための結婚だ。虫唾が走るような男に抱かれるワンの悲劇。ワンとの恋に破れた皇太子は遠い呉越の地に隠遁していたのだが、父帝崩御の知らせを聞き都へ馬を走らせる。父の不慮の死が信じられず、またあっさり新帝の妃になるワンへの不信の念にも苛まれる。

   ワンとウールアンの、違う立場での復讐劇なのだ。原題の「大宴会」は即位と結婚を祝う祝宴のこと。ウールアンが父を毒殺する芝居を新皇帝の前で披露するのも「ハムレット」と同じで、ここで皇帝、王妃、皇太子とそれぞれが暗殺、復讐、敵討ちなどの決意をする。

   フォン監督はこの映画のテーマは人間の「欲望」だと言う。登場人物の行動や動機の裏側にあるものは総て「欲望」と密接に関わっていると。行動が行動を呼び、取り返しのつかない泥沼におちいって行く。豪華絢爛たる宮廷の内部での醜い人間同士の相互不信、反発、憎悪に比べ、ウールアンが隠遁していた呉越の自然の風景の美しいこと。


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