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「酔いどれ詩人になるまえに」
酒とセックスだけのその日暮らしの酔っ払い

【 365日映画コラム 】
07/8/15 コメントを見る・書く(1)
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   作家チャールズ・ブコウスキーの名を知ったのは、彼が自伝を脚本化して、ミッキー・ロークが主演した「バーフライ」(87年)という作品だった。LAの場末の酒場「ゴールデンホーン」に入り浸る大酒飲みの主人公ヘンリー・チナスキーと人生に幻滅したワンダ(フェイ・ダナウェイ)との酔っ払い物語だ。

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   94年に74歳で死んだブコウスキーは、だから今回は脚本を書いていないが、主人公の名前は「バーフライ」と同様ヘンリー・チナスキー。邦題「酔いどれ詩人になるまえに」は如何にも文学的なタイトルだが、原題は「FACTORUM」。「雑役係」という意味で75年のチャールズ・ブコウスキーの著作のタイトルだ。

   舞台はアメリカの田舎ミネソタ州ツインシティのセントポールとミネアポリス(例の橋が落ちて大騒ぎの場所)。ヘンリー・チナスキー(マット・ディロン)は酒のせいで職業を転々としている。仕事中は煙草を吸うなと言われれば吸うし、酔っ払い運転で何十回も捕まっているのにタクシー運転手に志願する。氷の運搬中に氷室の扉を開けて走り、着いたら水だけなんて失敗を繰り返す。それでも自分は言葉を愛する詩人だという自負がある。長編小説を書く準備は出来ていないが、詩や短編を毎週出版社に送り続ける。でも売れない。生活のためその場しのぎの仕事を渡り歩いているが、何をやっても続かない。その日暮らしの酔っぱらい。バーで出会った女ジャン(リリー・テイラー)と同棲するが、二人して飲んだくれ。酒とセックスだけ。別の女ローラ(マリサ・トーメイ)の所に転がり込んでも落ち着かない。彼らを繋ぐ共通項は酒だけだ。

   チャールズ・ブコウスキーが作家を目指していた修業時代の話で、「バーフライ」と対を成す作品だ。M・ロークならともかく、端正なM・ディロンではどうかなと訝しく思ったが、無精ひげでグラス片手に煙草を吸い、とろんとした目つきのディロンは立派な酔っ払いだ。ナレーションもディロンで、覇気が無い酒焼けしたかすれた声が画面に合っている。酒での失敗をユーモアと暖かさを加えて説明するのだが、閉塞感に満ちた境遇に、唯一未来を照らす光があるように聞こえる。

   監督・脚本は「キッチンストーリー」で注目を浴びたノルウェーのベント・ハーメル。アメリカとノルウェーの合作映画である。


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