J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

日テレよ 巨人戦を捨てろ

   日本テレビの凋落とは、取りも直さず視聴率の低迷である。「巨人戦」の低迷が最大の原因なのに、いまだに昔の夢を捨てられない。それが、さらなる低迷につながっている。

   JINビジネスニュースの記事「日テレ凋落 もうとまらない」でも指摘したように、2006年3月決算では在京キー4局が過去最高の売り上げになる中、日テレだけは売上高、経常利益、純利益とも全てマイナス。 02年度まで9年連続視聴率の"三冠王"は今や見る影も無い。それどころか、日テレアナウンサーによる盗撮事件や、数々の番組のヤラセ問題がなど不祥事のオンパレード。凋落の一途を辿っている。

巨人戦中継が基本ソフトであるという思い込み

巨人戦はどうなってしまうのか
巨人戦はどうなってしまうのか

   放送評論家の志賀信雄氏は、ここまで日テレがおかしくなった最大の原因は、「巨人戦」視聴率の低迷だと分析する。野球は日本の国技とまで言われ、プロ野球を発展させ現在も支えているのが巨人であり読売グループだ。日テレがこれまで躍進できたその原動力であり、「生命」のようなものだが、それに大きな傷が付いたことで全体のバランスが狂った。
   06年6月の平均視聴率は2ケタを切る月間過去最低。6月28日夜にTBSが放送した「横浜対巨人」戦の平均視聴率が4.9%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)という惨憺たるもの。地上波での巨人戦の放送を止める局も出てきた。

    巨人戦の視聴率低迷は90年代後半から顕著になる。レジャーの多様化や、スポーツではサッカーや格闘技が野球人気を奪った。現在のように、ゴールデンタイムに視聴率5%を切る状況になっても、往生際が悪いというか、現実を認めていない。
   久保伸太郎社長は06年6月26日の定例記者会見で、

「巨人戦は(プロスポーツの中で)その中核であり非常に人気の高いソフトであると思っています。巨人戦中継が基本ソフトであるという位置付けは変わりません」

   と話し、失笑を買った。TV業界では

「ゴールデンタイムに5%ではスポンサーが付くわけない」 「巨人戦を全部切る局が出てもおかしくない」

   と声高に言われているのにである。ましてや、日テレが中期経営ビジョンに真っ先に掲げた「放送収入No.1」を実現するのに、巨人戦に頼るのでは夢のまた夢だ。

「社内の風通しが悪くなっている事も大きい」

   志賀氏はこう言う。

「日テレの社員は本当に頑張っているんですよ。良いアイディアも沢山生まれるのですが、出来上がった番組は、視聴者の感性とズレているんです」

   誰に何を見せるかのポイントがつかめなくなっているという。その原因は、スポンサーに気を使いすぎることや、上層部の機嫌を伺っていること、視聴率低迷で社員が弱気になっていることなど色々考えられるという。
   一生懸命仕事をしても成果が上がらない。それで"ふて腐れる社員"も現れ、相次ぐ不祥事はそんな雰囲気の中から生まれている。志賀氏はそんな風に考えている。

   さらに、日テレトップの問題点も指摘する。

「氏家齊一郎体制が長期化し、社内の風通しが悪くなっている事も大きい」

   氏家氏が日テレ社長になったのは1993年。03年に日テレ社員が視聴率不正操作をした責任を取り会長・CEOを辞任するが、代表取締役は退かなかった。2005年6月29日付けで"子飼い"と噂の久保伸太郎氏を新社長に据えた。そして取締役会議長になり、 「今後、大所高所から経営戦略全体を監視・監督する」と「宣言」、周囲を唖然とさせた、という。絶対的存在に、進言できる幹部は殆どいない。
   意見を言えるとすれば読売の渡辺恒夫氏くらいだが、その気配はない。
   氏家氏も「良い番組を作るように」とハッパをかけているようだが、その思いが下に伝わらず、下の思いも上に伝わらない。

「本来なら久保社長が番組制作などを含め陣頭指揮を執って、視聴率回復の実現に向かうべきだけど、彼はテレビに来て間が無く経験も浅い。日テレがかつての輝きを取り戻すまでは時間がかかると思う」