J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

「ぬれ煎餅買って」 貧乏電鉄会社の悲痛

   「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」「電車運行維持のために『ぬれ煎餅』を買ってください」。銚子電鉄は2006年11月17日、こんな緊急報告を自社のホームページトップに掲載した。一見、冗談のようにも見えるが、本当にマジなのだ。

   緊急報告にはこう書かれている。

「弊社は現在非常に厳しい経営状態にあり、鉄道の安全確保対策に、日々困窮している状況です。年末を迎え、毎年度下期に行う鉄道車両の検査(法定検査)が、資金の不足により発注できない状況に陥っております。このままでは、元旦の輸送に支障をきたすばかりか、年明け早々に車両が不足し、現行ダイヤでの運行ができないことも予測されます」

「ぬれ煎餅」の年商は鉄道部門の2倍以上

ホームページには「ぬれ煎餅」購入を呼びかける「緊急報告」が
ホームページには「ぬれ煎餅」購入を呼びかける「緊急報告」が

   そこで銚電が修理費を稼ぐためにお願いしているのが「ぬれ煎餅」の購入だ。「ぬれ煎餅」は煎餅生地を焼き上げた後、醤油だれをつけてそのままの状態にした柔らかい煎餅だ。価格は税込みで普通味5枚入り410円、10枚入り 820円。

   国の補助金が97年に打ち切りになることが決まったため、その分を稼ごうと、95年から犬吠駅で売り出したのが始まり。以来、かなりの人気になった。銚電の鉄道部門の年商は1億1千万円程度だが、この「ぬれ煎餅」の年商は2倍以上の2億5千万円にもなっている。鉄道の赤字を「ぬれ煎餅」の利益で補ってきたが、それでも間に合わない。そこで、一層「ぬれ煎餅」事業を拡大し、鉄道経営維持を図ろうとしているのである。

車両の修理費用がほとんど無い状態

   銚電はJ-CASTニュースの取材に答え、経営状態の厳しさをこう語った。

「車検切れに伴う鉄道車両の修理をしなければならないのですが、その費用がほとんど無い状態です。情けない話ですが、社員の給与の支払いにも支障が出てきそうで、それで緊急広告をしたわけです。なんとか『ぬれ煎餅』を買っていただいて支援してほしいんです」

   銚電は1923年に銚子~外川6.4㎞で営業を開始。運転回数は1日72本(36往復)で、1日約1,800人が利用する。所有する車両は6両だが、動くのは5両。「車検に伴う修理代は1両200万円ですが、古い車両のため、それ以上の費用になると思う」と話す。
   廃線にしようという話は何度も出たが、「運行の継続は諦めない」と踏ん張ってきた。銚電のホームページにはこんなことも書かれている。

「まだまだがんばりますので引き続きお買上お願いいたします」
「電車が大好きな従業員一同」